カレントテラピー 36-10 サンプル

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骨粗鬆症診療の真の目的は何か?!―脆弱性骨折の予防と診療の最前線―企画帝京大学医学部整形外科学講座主任教授河野博隆企画帝京大学医学部附属病院外傷センターセンター長渡部欣忍エディトリアル本特集のテーマは「骨粗鬆症診療の真の目的は何か?」という問いかけとしました.骨粗鬆症は社会の高齢化に伴い増加の一途を辿り,また重症化しています.閉経後の骨粗鬆症のみならず,男性においても高齢者の性腺機能低下による骨粗鬆症の増加が問題となってきており,本邦で骨粗鬆症の診断基準を満たす患者数はすでに国民の1割を超える1,280万人におよぶと報告されています.骨粗鬆症における基礎研究,臨床研究は着実に進んでおり,さまざまな新規薬剤や手術方法が開発されてきました.診療に関しても『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン』が策定され,標準化が進んでいるように感じます.しかし,その進歩の集大成として,実際の診療現場では本当に必要な患者に必要な医療が提供されているでしょうか.高血圧症や糖尿病と比して,骨粗鬆症に対する治療介入率は低く,その割合は治療が必要な患者の20%に留まっているといわれています.この介入率の低さは,骨粗鬆症が多くの国民の健康寿命に大きな影響を与えているにもかかわらず,医療者の運動器に対する関心が低いことを反映しているように感じます.さらに骨粗鬆症診療が「脆弱性骨折の予防と治療」という本来の目的を忘れ,評価の手段である骨密度や骨代謝マーカーというサロゲートマーカーの数値維持が目的化したために,無症状の人に対して投薬を行い,検査で数値を追うことのみが骨粗鬆症診療になってしまっています.その結果,最も治療介入が必要な「脆弱性骨折患者」の骨粗鬆症管理が置き去りになっているのが実情です.脆弱性骨折が生じてしまうと,内科医は治療手段をもたないため整形外科に管理を委ねます.整形外科は骨折局所の治療を行いますが,骨量維持を含む全身管理は内科が行っていると思っています.お互いに管理状態を確認することはありません.結果として脆弱性骨折患者が骨折を繰り返す負の連鎖が断ち切れない状況が生じています.さらに特定機能病院などにおける診断群分類包括評価(DPC)や回復期リハビリテーションにおける包括診療報酬制度も,脆弱性骨折患者に対する骨粗鬆症の治療継続を阻害する要因となっています.本特集では,骨粗鬆症診療の基盤を確立する基礎研究者,全身を包括的に管理する内科医,脆弱性骨折の局所治療を担当する整形外科医に,各領域の現状と課題をまとめていただきました.骨粗鬆症診療の真の目的である「脆弱性骨折の予防と治療」の達成のためには,関連する各科と各職種・部署がお互いの状況を把握したうえで診療体制を整備することが求められるだけでなく,その体制を支える社会制度と医療報酬制度が必要となります.ぜひ内科と整形外科の両者がお互いの役割を認識し,連携を取りながら,骨粗鬆症診療体制のツートップとしてチーム医療を牽引していくことを願っています.Current Therapy 2018 Vol.36 No.109337