カレントテラピー 36-10 サンプル page 26/30
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カレントテラピー 36-10 サンプル
Current Therapy 2018 Vol.36 No.10 951021骨強度─骨量と骨質─東京慈恵会医科大学整形外科学講座准教授 斎藤 充骨粗鬆症とは,骨強度が低下して,骨折しやすくなる全身性の疾患である.骨は成長とともに大きさを増すが,成人期以降は,ほぼ同一の大きさで変化しない.しかし,骨は老朽化しないように常に新陳代謝を営んでいる.骨の古くなった部分は破骨細胞が骨吸収を行い,その部位に骨芽細胞が新しい骨を補填する.この吸収と形成のバランスが1対1であれば骨の量も質も保たれる.骨は鉄筋コンクリートの建物に例えられる.コンクリートがカルシウム,鉄筋に相当するのが棒状の蛋白質であるコラーゲンである.鉄筋コンクリートの建物は経年的に鉄筋が錆びることにより,コンクリートにひび割れが生じ耐震性が低下するが,骨も同じように経年的にコラーゲンが老化し,骨にはひび割れ(微細骨折)が発生する.この老朽化を修繕するために,骨は新陳代謝を営むのである.女性は閉経以降,男性でも壮年期以降,性ホルモンが経年的に減少し,骨吸収が骨形成を上回り,骨の量やカルシウムの密度(骨密度)が低下し,骨折しやすくなる.また,糖尿病や腎不全,動脈硬化性疾患といった生活習慣病を患っている場合は,全身性に老化誘導因子である活性酸素が増加し,骨の老化を促進することで骨折の危険性が高まる.活性酸素の増加により酸化ストレスが高まり,骨のコラーゲンの老化(鉄筋の錆び)は進行し,それだけでも骨強度は低下する.コラーゲンの老化の本体はコラーゲンの周りに増加する終末糖化産物(advanced glycation end products:AGEs)である.このため骨の強度を保つには,亢進した骨吸収を適度に抑制し,骨形成をしっかり維持すること,コラーゲンの老化の原因となる活性酸素をおさえて酸化ストレスを軽減することが重要である.このためには薬剤治療のみに頼るのではなく,適切な栄養摂取が必要である.ビタミンDは腸管からのカルシウムの吸収に必須であるが,転倒予防のビタミンとして知られている.ビタミンKやB群は抗酸化作用が有りコラーゲンの老化予防に役立つ.骨粗鬆症診療の真の目的は何か?! ─ 脆弱性骨折の予防と診療の最前線