カレントテラピー 36-10 サンプル

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カレントテラピー 36-10 サンプル

92 Current Therapy 2018 Vol.36 No.101018た11).後者は多施設によるプラセボ対照のランダム化試験で,閉経後の低骨量の女性419人を対象に,12カ月間にわたってromosozumabの有効性と安全性を調べた11).骨密度の変化については,romosozumabの月1回投与群では腰椎,大腿骨近位・頚部ともに3,6,12カ月と増加を続け,代表的なビスホスホネート製剤であるアレンドロネート群,副甲状腺ホルモン製剤であるteriparatide群を上回る結果であった11).骨形成マーカーP1NPは,投与開始1週間後には急激に増加し,1カ月をピークにその後はなだらかに低下し,9,12カ月ではベースラインを下回った11).骨吸収マーカーβ-CTXは投与開始1週後をピークに減少し,その後3カ月にかけてベースラインまで増加したが,6,9,12カ月とまた減少に転じていた11).436人の閉経後女性の骨粗鬆症患者が参加したオープンラベルのteriparatideとの比較対照試験でも,romosozumabの優位性は揺るがなかった12).骨密度の変化については,teriparatideによって増加したのは腰椎のみであったのに対して,romosozumabでは腰椎,大腿骨近位・頚部すべてで増加がみられた12).またqCTによって,romosozumabは海綿骨のみならず皮質骨の量も優位に増加させることが示された12).治療開始1年で椎体骨折のリスクを有意に減らす一方,非椎体骨折については有意差がないとされたが13),欧州,アジア地域では非椎体骨折のリスクも優位に減らすことが証明された14).骨代謝マーカーの推移などから,romosozumabは月1回投与を1年間続けることを一区切りとしているが,治療終了後に一切骨粗鬆症治療を行わないと1年間で急速に骨密度が低下する一方,抗RANKL抗体デノスマブに切り替えると骨密度はスムーズに増加し続けることがわかった15).他の骨粗鬆症薬からの切り替えについてはまだ報告は多くないが,アレンドロネートからromosozumabへの切り替えに関しては骨密度の増加も継続的に見られ,大きな問題はないようである15).骨形成促進薬であるteriparatideは骨折や手術後の骨癒合も促進することが知られているが,抗SOST抗体についてもマウスやラットの骨折モデルを用いた実験の報告がすでにいくつも出ている.骨折部における骨量も強度も有意に増すことは独立した複数の研究で示されており,骨量増加の速度も促進されると報告されている16).Wntシグナルは骨芽細胞分化を促進する一方,軟骨では基質の変性をもたらし,軟骨細胞を骨芽細胞に転化させることが以前から知られていたが,骨折治癒過程において抗SOST抗体は仮骨領域における軟骨組織の量を減らすことが示されており,仮骨を形成した軟骨細胞を速やかに骨に転化させていると考えられる17).Romosozumabは骨形成を促進すると同時に骨吸収を抑制するという,これまでにない画期的な作用機序の骨粗鬆症薬である.他の製剤との切り替えや長期成績,骨折治癒との関連も含め,今後さらにエビデンスが増えることが期待される.Ⅲ AbaloparatidePTHは副甲状腺から分泌されるホルモンで,骨や腎臓に作用してカルシウムの恒常性維持などにかかわる.一方,PTH関連ペプチド(PTH-related peptide:PTHrP)は分泌された部位の周辺で局所的に作用し,特に軟骨内骨化を強力に制御することが知られている.これらは時間的,空間的にも異なる様式で働く液性分子であるが,N末端に類似した配列を有しており,ともにPTH受容体に作用する.原発性であれ続発性であれ,副甲状腺機能亢進症において骨密度の低下がみられることは以前から知られており,副甲状腺からの抽出物を動物に投与し,カルシウム代謝や骨の変化などを調べる研究が古くから行われてきた.その後,PTHのペプチド配列がわかり,人工的な合成も可能になって研究は加速し,PTHの血中濃度が持続的に高いと受容体の不応などが起きて骨形成が低下するが,PTHを間欠的に投与すると骨形成を促進することが明らかとなった.ヒトPTHは84アミノ酸から構成されているが,その後の研究によって,PTHの骨形成作用はN末端の1-34アミノ酸だけで十分に発揮されることもわかった.TeriparatideはヒトPTHのN末端の1-34と完全に同じ配列をもつペプチド製剤であり(図2),日本では2010年から市販