カレントテラピー 36-10 サンプル

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58 Current Therapy 2018 Vol.36 No.10984骨頭や人工関節を選択すべきである.一方,転子部骨折では内固定術が基本となる.体格の小さな日本人向けの髄内釘が開発され,内固定術は行いやすい.大転子や小転子を含む骨折がある不安定な骨折型であっても,転子部は良好な血流のため骨折部の安定化を目指した整復位の獲得により合併症なく骨癒合が得られ,良好な臨床成績が得られる18).しかしながら整復位不良,ラグスクリューの挿入位置が不適切であるなどの問題がある症例では,骨折部の術後再転位を生じ偽関節やラグスクリューのカットアウトなどの合併症が起きる場合がある.転子部骨折の合併症を極力減らすためには,不安定な骨折に対する骨性支持を得た適切な整復18)が鍵となる.転子下骨折,骨幹部骨折,遠位部骨折などすべてにおいて骨接合術が難しい原因は,脆弱骨のために骨皮質が薄く安定した整復位獲得が難しいこと,大腿骨の強い弯曲があれば適合する良いインプラントがない症例があること,金属製のインプラントと脆弱な骨の剛性が違いすぎるために,最初に骨折を固定したインプラントの周囲でのちに再骨折を生じることなどが挙げられる.また寝たきりの患者では,股関節や膝関節の拘縮が存在するために適切な手術体位がとりづらくインプラント選択が制限されることも骨接合術を難しくする要因となり得る(図4).3 下腿骨脆弱性骨折の脛骨近位端および遠位端といった骨幹端骨折は治療に難渋する19).これらはプレートで固定されることが多いが,青壮年であっても比較的治療が難しい骨折である.高齢者では強固な固定が困難なうえに,脆弱な軟部組織状態であるためプレートの使用が制限されるためより治療が困難となる.そこで必然的にかなり関節に近い骨折であってもできる限り髄内釘を用いた骨接合術を選択することが多くなる(図5).髄内釘を用いた場合,解剖学的整復の必要はないが,経皮的骨把持鉗子やブロッキングピンなどを用いて下肢アライメントに注意しながら骨折部にギャップを残さないような工夫が必要となる.先述したように,髄内釘はかなり進歩し固定性も良くなっているが,それでも術後再転位を生じる症例があり,固定力が不十分であればキャストなど外固定を追加し,歩行時にはPTB装具を着用させるなどの細やかなケアが必要となる.高齢者の下肢骨折の治療においては,術後早期の荷重歩行が理想であるため,それを実現させる内固定術や場合によっては外固定の併用を考慮しなければならない.a:受診時骨盤3DCT b:術後1年骨盤単純X線写真図3 脆弱性骨盤輪骨折95歳,女性.歩行時に転倒後,両臀部痛があったが何とか歩行ができていた.受傷後10日目より疼痛が増悪し,体動も困難になったため救急搬送された.3DCTで両側仙骨骨折(→)を認める(a).慢性心不全,呼吸不全があったため,より侵襲の少ない内固定法を選択した.術後1カ月で歩行が可能となった(b).