カレントテラピー 36-10 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.10 57脆弱性骨折の外科的治療の問題点983接合術の難しい点である.Ⅳ 骨盤・下肢骨折1 骨盤輪・寛骨臼従来は高エネルギー損傷による若年者の骨折がほとんどで,内固定にまで至る症例は高齢者ではまれであった.しかし近年では高齢者の脆弱骨をベースとした骨折が多く見られるようになってきた.脆弱性骨盤輪骨折では受傷がいつかはっきりしない症例も多いが,軽微な外傷により最初は骨折の転位がわずかであったものが経時的に思わぬ骨盤の変形へと進行する症例があり注意が必要である.骨盤は立位や歩行で力学的に大きな負荷がかかるが,高齢者では骨盤を強固に固定できる骨質ではないため若年者と同様の固定法では上手くいかないことがある.また骨盤骨折の観血的整復内固定術自体が多量の出血を伴う侵襲の大きな手術であるため,高齢者ではより低侵襲で十分な固定力が得られる手術法を選択しなければならない.例えばナビゲーションシステムを利用した経皮的スクリューを挿入する方法や経皮的に挿入したスクリューを皮下で連結させて骨盤輪を安定化させる方法(図3)は,安全で侵襲も少なくある程度の固定力が得られる良い治療である.高齢者の寛骨臼骨折16)はmarginal impactionやdoom impactionのように股関節の関節面自体が圧壊していることが多く,解剖学的整復位を獲得しかつ強固に固定することは難しい.よって関節面が圧迫された骨折がある場合は,内固定だけに固執せず人工股関節置換術を選択するか,骨折型によってはプレートによる内固定を行ったうえで人工股関節の併用を考慮しなければ受傷前のADLを獲得することは難しい.2 大腿骨大腿骨近位部骨折は脆弱性骨折のなかで最も多い.内固定の適応は,頸部骨折では転位の少ない安定型である.整復が困難な不安定型骨折では一般的に人工骨頭か人工関節が適応となる.よって頸部骨折の内固定が難しいのは骨接合の技術的問題点というよりも,その骨折が安定型か不安定型かの診断にある17).安定型と不安定型を明確に区別し得る定義が定まっておらず,施設や担当医師の判断にゆだねられている点が問題である.高齢者では再手術が必要になる治療はできる限り避けるべきであり,手術法の選択に迷う際はより術後成績が安定している人工a:受診時左肘関節単純X線写真b:術後1年6カ月左肘関節単純X線写真図2 左上腕骨遠位端開放骨折92歳,女性.階段から転落し受傷.開放骨折であり顆部にも骨折が存在していた(a).緊急で手術を行った.骨癒合は順調に得られ,術後1年6カ月の時点で肘関節は伸展-10度,屈曲120度と良好な可動域が保たれていた(b).