カレントテラピー　36-10　サンプル page 13/30

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カレントテラピー　36-10　サンプル

Current Therapy 2018 Vol.36 No.10 21運動器疾患およびがん治療と骨粗鬆症947いことが明らかとなってきており，こうした大腿骨近位部骨折後の死亡率上昇やQOL低下が男性骨粗鬆症の特徴のひとつと考えられている．男性骨粗鬆症の診断に際しては，女性の場合と同様に骨密度低下と脆弱性骨折の有無を判定して行われるが，女性に比べて男性は骨密度が高くても骨折有病率が高く，高骨密度でも骨折を生じやすい可能性が示唆される10）．また，男性骨粗鬆症ではステロイド性，前立腺癌に対するアンドロゲン抑制療法，胃切除後，アルコール性，慢性腎臓病，慢性閉塞性肺疾患などに起因する続発性骨粗鬆症の割合が高いとされ，わが国では男性骨粗鬆症全体の約4割が続発性とする報告もあり，その頻度も女性の2倍以上と高い．とりわけ，前立腺癌に対してLH -RHアゴニストや去勢をはじめとするアンドロゲン抑制療法（androgendeprivation therapy：ADT）を行った際のテストステロンの急激な低下に伴い，骨粗鬆症が年間数％の割合で出現すると考えられている11）．さらに，ADTを受けた患者では前立腺癌の骨粗鬆症による骨折頻度も高く，ADT治療期間に比例して増加することもわかってきている．骨代謝マーカーに関しては，骨形成・骨吸収マーカーともに閉経後女性に比べて男性では低値を示す場合が多く，男性骨粗鬆症における低代謝骨回転を反映している可能性も示唆される．その一方で，男性骨粗鬆症に対するテストステロン補充療法の有効性については，これまでの臨床試験，メタアナリシスなどによる検討により明らかな効果が確立するまでに至っていない．Ⅳ おわりに本稿では，フレイルと骨粗鬆症を取り上げ，加齢に伴う性ホルモンの動態，身体機能や認知機能への影響，転倒リスクとの関連性などについて概説した．性ホルモンをはじめとする各種ホルモンが，フレイルの予防や進展防止に重要である可能性が次第に解明されてきており，筋骨連関のメカニズムやフレイルと骨粗鬆症との病態関連性など，今後の研究・臨床の更なる進展が期待される．参考文献1）Fried LP, Tangen CM, Walston J, et al；CardiovascularHealth Study Collaborative Research Group：Frailty in olderadults：evidence for a phenotype. J Gerontol A Biol Sci MedSci 56：M146-156, 20012）Ensrud KE, Ewing SK, Taylor BC, et al；Study of OsteoporoticFractures Research Group：Frailty and risk of falls,fracture, and mortality in older women：the study of osteoporoticfractures. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 62：744-751,20073）Orwoll E, Lambert LC, Marshall LM, et al；OsteoporoticFractures in Men Study Group：Endogenous testosteronelevels, physical performance, and fall risk in older man. ArchIntern Med 23：2124-2131, 20064）Fukai S, Akishita M, Yamada S, et al：Association of plasmasex hormone levels with functional decline in elderly menand women. Geriatr Gerontol Int 9：282-289, 20095）Fukai S, Akishita M, Yamada S, et al：Plasma sex hormonelevels and mortality in disabled older men and women. GeriatrGerontol Int 11：196-203, 20116）山本逸雄：骨粗鬆症人口の推定．Osteoporo Jpn 7：10-11,19997）折茂　肇，坂田清美：第四回大腿骨頸部骨折全国頻度調査成績：2002年における新発生患者数の推定と15年間の推移．医事新報 4180：25-30, 20048）Seeman E. Pathogenesis of osteoporosis. J Appl Physiol 95：2142-2151, 20039）Fujiwara S, Kasagi F, Masunari N, et al：Fracture predictionfrom bone mineral density in Japanese men and women. JBone Miner Res 18：1547-1553, 200310）白木正孝ほか：男性骨粗鬆症の診断基準．BONE 15：255-260, 200111）Smith MR：Osteoporosis and obesity in men receiving hormonetherapy for prostate cancer. J Urol 172：S52-56, 2004