カレントテラピー 36-10 サンプル

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18 Current Therapy 2018 Vol.36 No.10944Ⅰ はじめにフレイルは身体予備能の低下を基盤とし,健康障害のリスクを有する状態として脆弱化した心身をとらえている概念であり,日常生活動作(activities ofdaily living:ADL)や生活の質(quality of life:QOL)に及ぼす影響に加えてサルコペニア・転倒リスクの上昇とも関連し,わが国においてその予防対策は重要な課題となっている.高齢者における骨折発生についても,サルコペニアに代表される筋量減少,筋力低下やそれに伴う転倒予防機能の低下が大きなリスク因子となることが知られており,これまでの知見から性ホルモンの濃度,動態と,これらリスク因子との間に関連性が示されるようになってきている.閉経に伴う女性ホルモンの欠乏状態など,加齢に伴って性ホルモンの分泌,血中濃度,代謝速度,応答性に種々の変化が生じることが知られており,フレイルのバイオマーカーとしての有用性やホルモン補充等の介入によるフレイルの改善効果も期待される.Ⅱ フレイルの概念と転倒・骨折リスクフレイルついては,日本老年医学会から2014年にステートメントが発表され,「加齢に伴う種々の機能低下を基盤とし,種々の健康障害に対する脆弱性が増加している状態」と概念的にまとめられている.実際,フレイルの概念には高齢者の身体的側面に加えて,精神・心理的側面,社会的側面も含まれていると考えられるが,Friedらによる指標では身体機* 東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座准教授骨粗鬆症診療の真の目的は何か?! ─ 脆弱性骨折の予防と診療の最前線フレイルと骨粗鬆症小川純人*高齢者において,加齢に伴うさまざまな機能変化や生理的予備能力の低下によって健康障害リスクを有する状態はフレイルと理解され,要介護状態への移行や生活の質(quality of life:QOL)・日常生活動作(activities of daily living:ADL)に及ぼす影響が大きいことなどからも,その予防対策は重要な課題となっている.フレイルの要因またはフレイルと関連を有する要素としてサルコペニアや認知機能低下などが挙げられるが,性ホルモンやビタミンDをはじめとするさまざまなホルモン,液性因子の加齢変化がフレイルの発症・進展に関与し,転倒・骨折リスクとも関連している可能性が明らかになってきている.特に,加齢に伴う性ホルモンの低下は骨粗鬆症,フレイルのリスクを高める可能性があり,特に男性の大腿骨近位部骨折は女性に比べて予後が悪いとされる.本稿ではフレイルと骨粗鬆症について性ホルモンの動態や骨の加齢変化を含めて概説する.