カレントテラピー 35-9 サンプル

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10 Current Therapy 2017 Vol.35 No.9824BRCA1 で600種類以上,BRCA2 で300種類以上の変異部位の報告がされている2).BRCA 変異陽性者の発癌の機序は,Two-hit theoryに基づく癌抑制遺伝子の不活性化によるものであり,その癌組織では散発性癌にはほとんど認められない正常型対立遺伝子座のヘテロ接合性の消失(loss of heterozygosity:LOH)の頻度がきわめて高く,両アリルのBRCA1/2 機能が消失している.このようなBRCA 機能消失をターゲットとした標的分子治療が近年登場したPARP阻害剤である.PARPは一本鎖DNA切断時の修復に機能し,その阻害は複製フォークを壊しDNA切断時の抗癌剤の治療増強作用があると推測されている.相同組み換えに必要なBRCA が不活性なBRCA 陽性癌でPARPを阻害すると自己複製できなくなり死滅すると報告されている.すでにHBOCの転移性卵巣癌に対してはPARP阻害剤であるOlaparibRが2014年12月に米国食品医薬品局(FDA)で承認されている.乳癌・前立腺癌に対しても現在第Ⅲ相国際治験が進行中である.3 遺伝カウンセリング・遺伝診療常染色体優性遺伝形式をとるHBOCでは発端者(その家系で最初にHBOCを疑った癌発症者)のみならず,血縁者への対応も求められる.BRCA 陽性者の次世代への遺伝確率は50%であり,わが国では成人後に血縁者の遺伝学的検査を行うことが可能である.遺伝学的検査(生殖細胞系列)は①生涯変化しないこと,②血縁者間で一部共有されていること,③血縁関係にある親族の遺伝型や表現型が比較的正確な確率で予測できること,④非発症保因者(将来的に発症する可能性はほとんどないが,遺伝子変異を有しており,その変異を次世代に伝える可能性のある者)の診断ができる場合があること,⑤発症する前に将来の発症をほぼ確実に予測することができる場合があること,⑥出生前診断に利用できる場合があること,⑦不適切に扱われた場合には,被検者および被検者の血縁者に社会的不利益がもたらされる可能性があることから遺伝学的検査受験前に遺伝専門家(臨床遺伝専門医,認定遺伝カウンセラー)による遺伝カウンセリングを行う必要がある.しかし,現在わが国では一部の遺伝性腫瘍を除き原則遺伝カウンセリング,遺伝学的検査の施行は自費診療である.HBOCにおいては,その研究は20年以上前より始められており,さまざまな臨床研究の結果,適切な医学的管理による癌の早期発見や生命予後の改善,標的治療薬の選択につながることがわかってきた.“体質を知る”ことからその“体質に応じた適切な医学的管理を提供する”ことの意義が明らかになっているのがHBOC である.Ⅱ multi-gene panelの台頭1 multi-gene panel検査近年,次世代シークエンス解析技術(next genera-25%5%5%14%51%BRCA1+BRCA2高浸透率遺伝子中浸透率遺伝子低浸透率遺伝子BRCAX高浸透率遺伝子:CDH1, PTEN, STK11, TP53中浸透率遺伝子:ATM, BRIP1, CHEK2, NBS1, RAD50, RAD51B, RAD51C, RAD51D, PALB2, XRCC2低浸透率遺伝子:67遺伝子図1家族性乳癌の原因遺伝子〔参考文献16)より引用一部改変〕