カレントテラピー 35-9 サンプル page 26/34
このページは カレントテラピー 35-9 サンプル の電子ブックに掲載されている26ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。
概要:
カレントテラピー 35-9 サンプル
74 Current Therapy 2017 Vol.35 No.9888Ⅰ はじめにPARP 阻害薬はDNA 修復作用をもつポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ〔poly(ADP ribose)polymerase:PARP〕の阻害薬である.2014年12月にPARP阻害薬のolaparibが欧州医薬品庁(EuropeanMedicines Agency:EMA)および米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)によって相次いで承認された.PARP阻害薬は当初,BRCA1/2変異陽性のがんに対する治療薬として開発・承認されてきたが,近年BRCA1/ 2 の変異を有さない場合であっても,相同組換え(homologous recombination:HR)にかかわる遺伝子の変異などにより相同組換え修復異常(homologous recombination deficiency:HRD)状態にある腫瘍においても高感受性を示すことが明らかとなった.HDR関連の遺伝子変異または発現異常などがPARP阻害薬に対する感受性,または予後推定のバイオマーカーとして考えられており,本領域の検討は急速に進展している.Ⅱ BRCA1/2およびPARPタンパクの機能とPARP阻害薬の作用機序細胞内のDNAは紫外線をはじめとするさまざまなダメージにより容易に損傷されるものの,DNA修復機構によって維持されている.BRCA1/2タンパクはその修復において重要な役割を担っており,相同組換え作用によって二重鎖切断されたDNAを修復する.一方でPARPは,一重鎖切断されたDNAを塩基除去修復作用によって修復を担う.これらBRCA1/2とPARPなどはそれぞれの修復機構によってDNAを維持する.しかしながらBRCA1/2 変異陽性細胞にPARP阻害薬を投与した場合,BRCA1/2による相同組換え作用とPARPによる塩基除去修復作用の双方の修復機構のPARP阻害薬平沢 晃*1・青木大輔*2*1 慶應義塾大学医学部産婦人科学教室専任講師*2 慶應義塾大学医学部産婦人科学教室教授乳癌ゲノム医療最前線─ 臨床応用はどこまで進んだかポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ〔poly(ADP ribose)polymerase:PARP〕阻害薬はDNA 修復機構に異常がある細胞をターゲットとして,「合成致死」といわれる細胞死を誘導する分子標的治療薬である.PARP阻害薬は遺伝性乳癌卵巣癌症候群(hereditary breast and ovarian cancersyndrome:HBOC)の原因遺伝子である,BRCA 1 またはBRCA 2 (BRCA 1 / 2 )の病的変異(病的バリアント)を有する腫瘍に感受性を示す.さらに最近は相同組換え(homologous recombination:HR)修復機能を喪失した腫瘍に対しても奏効が期待され,現在臨床試験が最も積極的に進められている分子標的治療薬のひとつである.PARP 阻害薬は乳癌や卵巣癌領域において,ゲノム医療実用化およびがんprecision medicineの嚆矢であるといえる.a b s t r a c t