カレントテラピー 35-8 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.8 9723依存した状態となる(oncogene addiction)1).EGFR遺伝子変異の9割はエクソン19欠失変異(44.8%),L858R変異(39.8%)のEGFR 活性型変異(commonmutation)が占め,その他エクソン18のコドン719の点突然変異(G719X)などのまれな遺伝子変異(uncommonmutation)がある1).EGFR-TKIはEGFRを介したシグナル伝達を抑制する薬剤であり,活性型変異を有する症例は高い感受性を示す.現在のところその作用機序により第一~第三世代に分類され,第一世代のゲフィチニブとエルロチニブはEGFRのチロシンキナーゼ領域に存在するATP結合部位に可逆性に結合することによって下流へのシグナル伝達を抑制する2),3).第二世代のアファチニブはEGFR,HER 2,HER 4に結合して二量体の形成を非可逆的に阻害する4).第三世代のオシメルチニブは非可逆性であり,EGFR の活性型変異を有する腫瘍細胞に加え,耐性変異であるT790Mを有する腫瘍細胞も選択的に阻害し,現在は第一・第二世代のEGFR -TKIでの治療後にT790Mを獲得した症例に対する二次治療として適応が認められている5).これらのうちゲフィチニブとエルロチニブ,アファチニブに関してEGFR 遺伝子変異を有する症例を対象にした1st lineでのphaseⅢ試験の概要は表1に示す通りである.プラチナ系抗がん剤と比較して,すべての臨床試験において一貫して有意に無増悪生存期間の延長が得られており,QOLの改善も期待できることから,EGFR 活性型変異を有するⅣ期の非小細胞肺がんにおける治療の第一選択として推奨されている6).ただし,一部のサブグループ解析の結果を除いてこれらの試験で,EGFR -TKIがプラチナ系抗がん剤と比較して有意に全生存期間が改善した報告はまだない.これらの試験のほとんどがEGFR -TKI 承認後に実施されたものであるため(ゲフィチニブ等の承認後にEGFR 遺伝子変異が発見された),プラチナ系抗がん剤使用群にも増悪後にEGFR -TKIが使用されていることが大きな理由として考えられている.さらに,これらのEGFR-TKI同士の直接比較も試みられている.ゲフィチニブとエルロチニブの無増悪生存期間においての非劣勢を証明するために計画されたphaseⅢ試験であるWJOG 5108L試験と,アファチニブとゲフィチニブの比較を行ったphaseⅡB試験であるLUX-Lung 7試験である7),8).WJOG 5108L試験では非劣勢は証明されず,LUX-Lung 7試験においてはゲフィチニブと比較してアファチニブで無増悪生存期間が有意に延長したものの,phaseⅡB試験であり,日常臨床に外挿するには今後の検証が必要である.これらの第一・第二世代のEGFR -TKI をどのように使い分けるかは現在の検討課題である.特に,①遺伝子変異の違い,②有害事象の違い,③病巣の存在する臓器の違いなどが薬剤を決定する主なファクターとなる.Ⅲ 遺伝子変異別の薬剤の選択1 EGFR 活性型変異(common mutation)それぞれの遺伝子変異別のEGFR-TKIへの反応性の違いの詳細はまだ明らかにされていないが,それぞれの遺伝子変異の生物学的な特性が影響しているという研究結果が得られつつある.実際に,第一・第二世代のEGFR -TKIに関してはL858R変異と比較してエクソン19欠失変異においてより高い効果が得られることが明らかになっており,これまでに行われた臨床試験の結果から,遺伝子変異別の薬剤の使い分けも検討されてきた9).その1例としてアファチニブとプラチナ系抗がん剤との効果の比較を行ったLUX -Lung 3試験とLUX -Lung 6試験では,エクソン19欠失変異においてのみアファチニブ群で全生存期間が有意に改善したという解析結果も得られ,今後はそれぞれの遺伝子変異別の治療戦略の必要性も示唆されているものの,現時点では第一・第二世代においては遺伝子変異別の明確な使い分けは定まっていない.2 Uncommon Mutation前述のEGFR 活性型変異(common mutation)以外の遺伝子変異はuncommon mutationと称され,エクソン18のコドン719の点突然変異(G719X),E709X,エクソン18欠失変異,エクソン19の挿入変異,エクソン20の挿入変異,S768I,エクソン21のL861Qなどが該当する.発現頻度が少ないため,大規模臨床試験に含まれる症例数も少ないうえ,除外されているこ