カレントテラピー 35-8 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.8 7721肺 が ん― 個別化医療の時代―企画地域医療振興協会・練馬光が丘病院呼吸器COPDセンター長杉山幸比古予後不良のがんの代表である,肺がんの診療は近年激変している.最も大きな変化は治療面で,これまで夢物語のように言われてきたテーラーメイド治療が実現され,まずは個々の患者さんの肺がん遺伝子を調べてからその遺伝子異常に適応した治療薬を選択して治療していく,という時代となっている.その端緒となったのが肺腺がんに対するEGFR阻害薬の登場であった.さらにEML 4-ALKがん遺伝子の発見とその阻害薬による治療が始まり,その他,KRAS, MET, ROSなどさまざまな原因遺伝子が発見されてきている.こういった背景から肺がん自体の分類も今後は,がん遺伝子に基づいた分類へと変わって行く可能性も示唆されている.こういった流れのなかで日本でも肺がん診断時に遺伝子を網羅的に解析する試み(LC-SCRUM-JAPAN)も始まっている.もう一つの大きな治療薬として,これまでとは全く発想の異なった,がん免疫を対象とする免疫チェックポイント阻害薬の開発がある.きわめてユニークな治療薬であり,すでに数種類が上市され実際に使用可能となっており,状況によっては治療の第一選択となるような薬剤も出てきている.しかしながら,この系統の薬剤にはこれまでと全く異なった副作用があり,Ⅰ型糖尿病や下垂体疾患,自己免疫的な甲状腺疾患などさまざまなものが報告されており,総合的な内科診療も肺がん治療の現場では要求される時代である.また,こういった新しい効果的な薬剤がどんどん開発上市されるなかで,これらの新規抗がん剤がきわめて高価であるという医療経済上の問題も生じてきている.そして,これらの新しい薬剤のおかげで,手術不能肺がん,特に非小細胞肺がんの生存期間は大きく改善され,5年以上の生存例も少なくない現状となっている.しかしながら,80歳以上の超高齢者の肺がんや間質性肺炎を合併する肺がんもますます増加し,当たり前のように見られる時代となってきている.こういった例での化学療法をどうするのか,さらに小細胞肺がんの治療をどうするのか,といった問題点もまだまだ存在している.本特集号では第一線の先生方にこれらの観点から,激しく進化し続けている肺がん診療の現況をつぶさにご解説いただくこととした.エディトリアル