カレントテラピー 35-8 サンプル

カレントテラピー 35-8 サンプル page 29/34

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 35-8 サンプル の電子ブックに掲載されている29ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 35-8 サンプル

82 Current Therapy 2017 Vol.35 No.8796コンパニオン診断薬国立がん研究センター中央病院呼吸器内科 佐藤 潤国立がん研究センター中央病院呼吸器内科科長・副院長 大江裕一郎コンパニオン診断薬(companion diagnostics:CoDx)とは医薬品の効果と副作用の予測またはモニタリングのために行われる体外診断用医薬品または医療機器を示す用語である.特定の遺伝子変異や免疫学的背景などのバイオマーカーが該当し,患者個人の特性を元にした個別化医療を推進するうえで重要な要素である.ゲフィチニブ(イレッサR),エルロチニブ(タルセバR)などの治療効果予測因子であるEGFR遺伝子検査や,クリゾチニブ(ザーコリR),アレクチニブ(アレセンサR)などの治療効果予測因子であるALK遺伝子検査などが該当し,単に疾病の診断を目的とする診断薬(および補助診断や経過観察に用いられる腫瘍マーカーなど)は該当しない.2011年7月に米国食品医薬品局(Food andDrug Administration:FDA)よりCoDxに関するドラフトガイドラインが発表され,新規開発される医薬品はその薬効および副作用を予測するためのCoDxを同時に開発することが推奨された.これを受けて本邦でも2013年12月に厚生労働省よりガイダンスが発行され,本邦におけるコンパニオン診断薬の開発と承認申請について法整備が進められている.CoDxにはバイオマーカーが陽性であることと医薬品の有効性の間に強い相関があることに加え,臨床的カットオフ値が妥当であることおよび臨床的バリデーションがされていることが必要とされる.特にバイオマーカー陰性例でも治療効果は生じうるため,CoDxとして承認されるには早期臨床試験から診断薬の陽性/陰性例を層別化して治療データを収集することが求められる.近年,医薬品開発が盛んな免疫療法の分野において,CoDxも並行して開発が進められている.抗PD - 1抗体であるペンブロリズマブ(キイトルーダR)はPD -L1陽性症例を対象とした臨床試験で有効性が示され,2015年10月に米国で薬事承認された.同時に,同薬剤の臨床試験でバイオマーカーとして使用された診断薬のPD-L1 IHC 22C3 pharmDx(DAKO)はCoDxとして承認された.一方で同効薬のニボルマブ(オプジーボR)はPD -L1陽性/陰性にかかわらず有効性が示されたため,同薬の開発時にバイオマーカーとして開発されたPD-L1抗体の28- 8(DAKO)は「complementarydiagnostics」として承認され,CoDxとは異なり投与前に必須の検査とはされていない.個別化医療に用いられる分子標的薬,免疫療法分野の薬剤はその高い薬価が問題となっている.CoDxの開発はこれまでの患者単位の有効性,安全性という観点以外にも,薬剤使用の統制という医療経済上の要請から,その必要性が増加している.2016年11月,従来のようなひとつの医薬品に対応するCoDxとは異なり,次世代シークエンサーによる複数の遺伝子変異解析手法をCoDxとした承認申請が非小細胞肺がんを対象としてFDAに承認申請され,現在審議中である(2017年4月時点).医療経済統制の役割や,対応する医薬品がひとつではないCoDxなど,今後もCoDxのあり方と意義は変化していくと予想される.肺がん─個別化医療の時代