カレントテラピー 35-7 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.7 11高尿酸血症・痛風の診断と治療619Ⅴ 痛風の動向痛風の有病率について,一般集団を対象とした最近の調査としては,2003年に和歌山県上富田町の住民を対象として行われたものが最新である13).この研究では,全住民を対象にしてアンケート調査が行われ,89.5%と非常に高い回収率のもと,痛風の疑いがある場合にはリウマチ専門医が問診・診察を行い診断確定するという,正確度の高い手法で行われた.その結果,男性における痛風有病率は1.06%(1,315名中14名,女性では1,435名中0名)であった.この調査の価値をさらに高めているのは,同一地域で約30年前にも調査が行われ,結果を比較できる点にある.すなわち,1974年にも30歳以上の住民に対して同様の調査が行われ,男性では有病率0.86%(350名中3名),女性では0%(528名中0名)であった14).2003年の調査を1974年と同様に30歳以上に限定すると,男性における有病率は1.67%となり,約30年間で倍増しているように見える(図6)(ただし,母集団が少ないため統計学的には有意差はない).医師による診断ではないが,経時的なデータとしては,国民生活基礎調査がある15).これは,全国の約30万世帯74万名を対象とした3年ごとの調査であり,通院中の疾患についての質問項目が含まれている.この調査結果をもとに全国民についての推計データが公表されている.この調査によれば,1986~2013年にかけて男性の痛風患者は増加傾向が続いている(図7).この調査による痛風の増加程度は,上記の上富田町における住民調査と比べはるかに高い.国民生活基礎調査の結果は,痛風患者自体の増加とともに,治療を受けている患者の割合も増加していることが反映されたものではないかと考えられる.Ⅵ 痛風の年齢分布痛風は尿酸塩の蓄積によって生じる疾患であり,高尿酸血症の持続期間が長いほど発症頻度は上昇する.したがって,年齢とともに発症率が高まることが予想される.実際に欧米では,痛風の発症率および有病率とも70~80歳代がピークであることが示されている16).わが国においては,発症率についての調査はないが,先に述べた国民生活基礎調査で2013年については,年齢ごとの通院率が示されている.それによれば,痛風による通院率は年齢とともに増加し,60~70歳代がピークであった(図8).最近利用可能となったレセプトデータベースによる解析でも,尿酸降下薬投与中の痛風患者の頻度は60歳代がピークを示した(図9)3).国民生活基礎調査においても,レセプトデータベースにおいても,60歳代の男性における痛風による通院率は3%を超えていた(図8,9).痛風患者すべてが通院しているわけではないことを考慮すると,この年1969-1974年3/350(%)0.86%2003年痛風有病率(男性,30歳以上)1.81.61.41.21.00.80.60.40.2014/8371.67%図6 和歌山県上富田町における痛風有病率の変化(男性,30 歳以上)〔参考文献13),14)より引用〕痛風での通院者数120(万人)1008060402001986 1989 1992 1995 1998 2001 2004 2007 2010 2013総数男性女性図7 痛風での通院者数の推移(国民生活基礎調査)