カレントテラピー 35-7 サンプル page 5/32
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カレントテラピー 35-7 サンプル
8 Current Therapy 2017 Vol.35 No.7616Ⅰ はじめに高尿酸血症は,体質的(遺伝的)要因に肥満や飲酒などの生活習慣が関連して発症する.痛風は尿酸塩の蓄積による病態であり,血清尿酸値が高いほど,また,その持続期間が長いほど発症の可能性が高まる.本稿では,高尿酸血症の頻度が近年増加傾向が続いた後,高止まりしていること,痛風は増加傾向が続いていることについて概説し,高齢者において痛風が今後さらに増加する可能性について触れる.Ⅱ 高尿酸血症の頻度高尿酸血症についての大規模な調査としては,JR東日本の職員を対象とした冨田らの報告が挙げられる1).この調査は男性約3万名,女性約5千名を対象としている.男性における高尿酸血症の頻度は26.2%(2004年)であったが,年齢別に検討すると,30歳代では30%に達することが報告されている(図1)1),2).しかし,40歳代以降においてはその頻度は徐々に低下し,60歳代では20%台前半となっていた(図1)1),2).女性においては,高尿酸血症は40歳代までは2%台であるが50歳代以降は3%台と増加しており,閉経に伴う血清尿酸値の上昇が反映されていると考えられた(図1)1).男性において,年齢とともに高尿酸血症の頻度が低下する要因として,尿酸降下薬の内服が考えられる.レセプトデータベースを用いた全国的な検討によって,尿酸降下薬を処方されている頻度は,30歳代の男性では1%前後であるが,その後は年齢とともに直線的に増加し,60歳代では10%近くに達していた(図2)3).この割合を図1のデータに加えると,40歳以降も30%* 安田女子大学家政学部管理栄養学科教授高尿酸血症・痛風─ 診断と治療の新展開高尿酸血症・痛風の最近の動向箱田雅之*高尿酸血症の頻度は,2000 年代半ばまでは成人男性において増加傾向であったが,その後は30%程度で高止まりしていると考えられる.男性では,中学生においても高尿酸血症はすでに10%以上に認められる.女性においては,高尿酸血症の頻度は閉経前では2%,閉経後は3%程度と推定される.痛風は男性では経時的に増加傾向であり,最近でもその傾向は続いている.痛風の有病率は年齢とともに増加し,60~70 歳代でピークを示す.高尿酸血症の持続期間が長いほど痛風の発症率は高まると考えられることから,今後,高齢者での痛風発症の増加が予想される.尿酸降下薬が投与されている患者数は,わが国では高尿酸血症のほうが痛風より多い.高尿酸血症における尿酸降下薬の投与が,痛風の新規発症をどの程度予防しているのかは不明であるが,わが国の痛風の有病率が欧米より低く,重症度も低いことに関係している可能性がある.