カレントテラピー 35-7 サンプル page 28/32
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カレントテラピー 35-7 サンプル
Current Therapy 2017 Vol.35 No.7 89697腎性低尿酸血症診療ガイドライン東京薬科大学病態生理学教室教授 市田公美腎性低尿酸血症の診療ガイドラインが初めて作成され,2017年4月に刊行された.腎性低尿酸血症は,腎臓における尿酸トランスポーターの異常により尿酸排泄が亢進し低尿酸血症をきたす疾患である.近位尿細管の尿酸トランスポーターをコードするURAT1/SLC22A12 とGLUT9/SLC2A9 が,原因遺伝子として報告されている.低尿酸血症自体による症状は認められないものの,運動後急性腎不全,尿路結石や,最近では可逆性後頭葉白質脳症の合併が報告されている.腎性低尿酸血症は,日本人の0 . 2%程度に認められることが推定され,他の人種に比して日本人に頻度の高い遺伝子疾患である.これらのことから,日本においてこそ腎性低尿酸血症の病態研究や取り扱い指針の作成などを積極的に進めることが望まれていた.本ガイドラインは,厚生労働省の難治性疾患等政策研究事業「腎・泌尿器系の希少・難治性疾患群に関する診断基準・診療ガイドラインの確立」の一環として,腎性低尿酸血症担当グループと日本痛風・核酸代謝学会により共同で作成され,医療情報サービスのMindsに準拠し,Evidence Based Medicineに基づいたものである.本ガイドラインは,2つのクリニカルクエスチョン(clinical question:CQ)および腎性低尿酸血症の教科書的記述として,診療アルゴリズム,疫学,病態,診断指針と検査・鑑別,合併症で構成されている.CQ1「血清尿酸値が2 . 0 mg/dl以下の場合には低尿酸血症の鑑別診断をするべきか?」は,健康診断などを含めて,日常診療において遭遇する可能性が高いCQである.複数回の測定により血清尿酸値が2.0 mg/dl以下である場合は,高い確率で腎性低尿酸血症である.腎性低尿酸血症であれば,運動後急性腎不全などの合併症のリスク管理が必要となるため,低尿酸血症の鑑別診断をすることが強く推奨されている.運動後急性腎不全は,主に腎性低尿酸血症患者で認められ,運動し数時間後に激しい腰背部痛などにより発症し,横紋筋融解症とは異なる病態である.活性酸素のスカベンジャーである尿酸が少ないことおよび尿酸への代謝酵素であるキサンチンオキシドレダクターゼ(xanthine oxidoreductase:XOR)の酸化酵素型であるキサンチンオキシダーゼが反応過程において活性酸素を産生し,腎血管が攣縮することが発症機序に関与していると考えられている.このような背景によりCQ2「腎性低尿酸血症の症例において,運動後急性腎不全予防のために薬物療法としてXOR阻害薬は投与されるべきか?」が出されている.いくつかの症例報告において,XOR阻害薬であるアロプリノールが有効であったと報告されている.しかし,ランダム化比較試験などは行われていないなどから,XOR阻害薬の有効性は必ずしも実証されたとは言えず,明確には推奨できないとの結論に至っている.今後のデータの集積により結論が出ることが期待される.高尿酸血症・痛風─ 診断と治療の新展開