カレントテラピー 35-7 サンプル

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78 Current Therapy 2017 Vol.35 No.7686高尿酸血症・痛風の患者は,飲酒を好む傾向があり4),疫学調査でも,アルコール飲料,特にビールの摂取量が多い人ほど血清尿酸値が高いことが報告されている5).1日にビールを平均1缶(340mL)飲む人は,全く飲まない人に比べて血清尿酸値が1mg/dL近く高い(p<0.001).蒸留酒でも血清尿酸値が高くなっている.食事と血清尿酸値の関係について調べた報告でも,肉類・魚類とも多く摂取するほど血清尿酸値が上昇し,痛風発症のリスクが高くなることが報告されている6),7).中世ヨーロッパの時代から美食家に痛風が多いことが知られているが,それは肉類,魚類に含まれるプリン体が体内で尿酸に変化して,血清尿酸値を上げるためである.Ⅲ 食事療法高尿酸血症・痛風が,飲酒や肥満,肉類・魚類および果糖の摂取と関連することから,食事療法は①飲酒制限,②適正なエネルギー摂取,③プリン体・果糖を摂り過ぎない,④水を多めに飲む,が基本となる.1 飲酒制限適度な飲酒量として,アルコール量として20~25g/日以下,すなわち,ビール500mL(中瓶1本),日本酒180 mL(1 合),ウイスキー60 mL(ダブル1 杯),ワイン125mL(1グラス),焼酎90 mL程度,のいずれかが勧められる.アルコールが血清尿酸値を上げる機序として,アルコールによるATPの分解,アルコール飲料に含まれるプリン体,生成する乳酸による尿酸の排泄抑制,が報告されている8)~12).大量の飲酒は,上記3つの機序により,どのアルコール種でも血清尿酸値を上げる.また,適量の飲酒でも長く続けているとビールも蒸留酒も尿酸値を上げる5).ビール中のプリン体の影響は,低アルコールビール,ノンアルコールビール,アルコールを含まない凍結乾燥ビールでもみられ,それぞれ血清尿酸値を上げる13),14),プリン体カットビールの適量飲酒では僅かしか血清尿酸値が上がらないことからもプリン体の影響が示される.図2に,アルコール摂取と高尿酸血症のリスクについて示した,尿酸値が7.0mg/dL以下の20~54歳の日本人男性3,310人を対象とした6年間の前向きコホート研究の結果である15).6年間で飲酒者の21.6%にあたる529名が高尿酸血症を発症し,発症のリスクは,ビール,日本酒とも,アルコール摂取量と有意に正の相関を示した.アルコール量約50g/日の摂取群における高尿酸血症発症のハザード比は,日本酒1.93(p<0.05),ビール2.86(p<0.05)であった.アルコール摂取と痛風発症のリスクに関する17の疫学調査をまとめたメタ解析(42,924例)では16),アルコール摂取の痛風発症のリスクは,少量飲酒者(<1 drink/日,<12.5 g)で1.16,中程度飲酒者(1- 3 drink/日, 12.6- 37.4 g)で1.58,大量飲酒者痛風発症の相対危険度2.0アルコール摂取肉類摂取BMI高値果物摂取ランニング距離が長い適度な運動をする1.21.51.20.70.90.61.510.50図1 生活習慣と痛風発症リスク〔参考文献2)より引用〕00.511.522.50 1.6 ~16.4g16.4 ~32.9g32.9 ~49.3g49.3g以上アルコール摂取量(g/日)ハザード比図2 アルコール摂取と高尿酸血症のリスク