カレントテラピー 35-7 サンプル

カレントテラピー 35-7 サンプル page 14/32

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 35-7 サンプル の電子ブックに掲載されている14ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 35-7 サンプル

64 Current Therapy 2017 Vol.35 No.7672インフラマソームの直接的な活性化を引き起こす.活性酸素種は,NLRP3インフラマソームの会合には関与していない.Ⅲ ジクロフェナクによるNLRP3インフラマソーム活性化の抑制痛風治療薬であるコルヒチンがNLRP3インフラマソームの活性化を阻害することは,NLRP3インフラマソームに対する阻害活性を有する抗炎症薬が他にも存在する可能性を示唆している.筆者らは,痛風治療薬として用いられるnon-steroidal anti-inflammatorydrugs(NSAIDs)であるジクロフェナクにも,NLRP3インフラマソームを阻害する活性があることを最近見出した(未発表).ジクロフェナクは,尿酸塩結晶で刺激したマクロファージからのNLRP3インフラマソーム依存的なIL -1βの放出を抑制する.さらに,ジクロフェナクは,尿酸塩結晶で刺激したマクロファージからのシクロオキシゲナーゼ依存的なプロスタグランジンE2(PGE2)の放出を抑制する.一方で,尿酸塩結晶で刺激したマクロファージからのIL- 1αの放出は抑制しない.これは尿酸塩結晶によるIL - 1αの放出が,NLRP3インフラマソームやシクロオキシゲナーゼに依存しないことによると考えられる10).よって,ジクロフェナクは,シクロオキシゲナーゼに加えてNLRP 3インフラマソームをも阻害することにより,尿酸塩結晶による痛風関節炎を緩和している可能性がある(図4).NSAIDsであるロキソプロフェンも,痛風治療薬として用いられている.しかしながら,ロキソプロフェンは,尿酸塩結晶で刺激したマクロファージからのシクロオキシゲナーゼ依存的なPGE2の放出を抑制するものの,NLRP3インフラマソーム依存的なIL - 1βの放出を抑制しない.ジクロフェナクはロキソプロフェンと比べると強い抗炎症効果を発揮すると考えられているが,これはシクロオキシゲナーゼに対する阻害効果の強弱に加えて,NLRP3インフラマソームに対する阻害効果の有無に起因する可能性がある.ジクロフェナクがNLRP3インフラマソーム活性化を阻害する機序については,現時点では不明である.ロキソプロフェンには同様の効果が見られないことから,シクロオキシゲナーゼとは異なる分子を標的にしている可能性が高く,今後の研究課題である.また,NLRP3インフラマソームとは異なる話題となるが,尿酸塩結晶に応じてIL - 1α放出を誘導する自然免疫機構についても興味深い.粒子状物質による炎症性疾患の発症にかかわる自然免疫機構は,NLRP3インフラマソームの他にも存在する可能性がある.Ⅳ おわりに粒子状物質による自然免疫機構の活性化がさまざまな炎症性疾患の発症にかかわることは次々に明らかとなっており,当該機構の研究は自然免疫分野における重要な課題となっている.しかしながら,病原体に固有の成分による自然免疫機構の活性化と比べて,粒子状物質による自然免疫機構の活性化についてはいまだに不明な点が多く残されており,今後の研究のファゴソーム・リソソーム膜損傷貪食NLRP3インフラマソーム活性化IL-1β産生尿酸塩結晶IL-1α産生PGE2産生シクロオキシゲナーゼ活性化?ジクロフェナクによる阻害図4 尿酸塩結晶により誘導される炎症に対するジクロフェナクの抑制作用尿酸塩結晶は,マクロファージなどのミエロイド系の細胞を刺激し,IL - 1β,IL - 1α,プロスタグランジンE2(PGE2)などの炎症性因子の放出を誘導する.ジクロフェナクは,NLRP3インフラマソームを介したIL - 1βの放出とシクロオキシゲナーゼを介したPGE2の放出を抑制することで,炎症を緩和する.