カレントテラピー 35-7 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.7 63高尿酸血症・痛風研究の最前線671Ⅱ コルヒチンによるNLRP3インフラマソーム活性化の抑制さまざまな炎症性の疾患の発症にかかわることから,NLRP3インフラマソームの活性化を阻害する化合物の同定とその作用機序の解明が進められている.筆者らは,化合物ライブラリーを用いたスクリーニングを行い,古くから痛風の治療に用いられているコルヒチンにNLRP3インフラマソームの活性化を阻害する活性があることを見出した4)~6).コルヒチンは,細胞形態の変容・維持および細胞内の物資輸送を仲介する役割を担っている微小管に対して作用し,その重合を阻害する.NLRP3インフラマソームの活性化には,微小管を介したミトコンドリアや小胞体などの細胞内輸送が深くかかわっている.マクロファージにおいては,NLRP3インフラマソームの構成因子であるNLRP3とASCが,それぞれ小胞体とミトコンドリアの膜上に主に局在している.別々のコンパートメントに局在する両因子の会合は,通常は低頻度でしか起こらない.一方で,尿酸塩結晶で刺激したマクロファージにおいては,ミトコンドリアと小胞体が微小管を介して高頻度に近接するようになり,両因子が効率よく会合するようになる(図3).コルヒチンは,微小管の重合を阻害するため,尿酸塩結晶刺激に応じた微小管依存的なNLRP3インフラマソームの会合を妨げる.よって,コルヒチンには,よく知られている好中球などの炎症エフェクター細胞の遊走を阻害する活性に加えて,IL - 1βなどの炎症性因子の放出を阻害する活性があり,当該活性により痛風関節炎の症状を緩和すると考えられる.微小管の翻訳後修飾は,細胞内の物資輸送を調節することが知られている.特に,微小管を構成するαチューブリンのアセチル化修飾は,ミトコンドリアと小胞体の近接を促進する7).アセチル基転移酵素であるMEC - 17 と脱アセチル化酵素であるSIRT 2 はαチューブリンのアセチル化を制御しており8)~9),NLRP3インフラマソームを介したIL - 1βの放出に対して,それぞれ促進的と抑制的に働く.尿酸塩結晶で刺激したマクロファージにおいては,ミトコンドリア機能不全に伴いSIRT 2の補酵素であるnicotinamideadenine dinucleotide+(NAD+)が大幅に減少する.SIRT2の活性低下はアセチル化αチューブリンの増加へとつながり,ミトコンドリアと小胞体の近接を介したNLRP3インフラマソームの会合を促進すると考えられる(図3)5)~6).また,機能不全に伴いミトコンドリアからの活性酸素種が増加し,NLRP3小胞体ASCASCASCNLRP3 NLRP3NLRP3NLRP3ASCNLRP3Caspase-1活性化IL-1β放出尿酸塩結晶ファゴソーム・リソソーム膜損傷ミトコンドリア機能不全NLRP3-ASC会合痛風関節炎貪食微小管細胞質NLRP3インフラマソーム活性化Ac AcAc AcAcAc図3NLRP 3インフラマソームの活性化機序マクロファージにおいては,貪食された尿酸塩結晶によりファゴソーム・リソソームの膜が損傷する.損傷したファゴソーム・リソソームから内容物が漏出すると,ミトコンドリアが損傷し,機能不全となる.ミトコンドリアが機能不全に陥ると,細胞内NAD+レベルが低下する.NAD+を補酵素とするαチューブリン脱アセチル化酵素SIRT2の活性が低下すると,アセチル化(Ac)されたαチューブリンが増加する.アセチル化された微小管は,小胞体とミトコンドリアの近接を促進し,小胞体上のNLRP3とミトコンドリア上のASCが高効率で会合するようになる.コルヒチンは,微小管重合に抑制的に作用し,微小管を介したNLRP3インフラマソームの会合を阻害する.