カレントテラピー 35-7 サンプル

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62 Current Therapy 2017 Vol.35 No.7670胞からのケモカイン産生を誘導し,好中球やT細胞などの炎症のエフェクター細胞の遊走を促進する.NLRP3インフラマソームによる炎症は,病原体に応じて一過性に誘導されるものであり,病原体が排除された後には収束する.一方で,NLRP3インフラマソームには,過栄養摂取により生じる尿酸塩結晶,加齢・遺伝的要因により生じるβアミロイドや環境汚染因子であるアスベストなどの粒子状物質に反応し,炎症による痛風,神経変性疾患や呼吸器疾患などの発症要因となる負の側面がある(図1)2)~3).細菌を貪食した際と同様に,粒子状物質を貪食した際にも,ファゴソーム・リソソームの膜は損傷する.NLRP3インフラマソームは,粒子状物質によるファゴソーム・リソソームの損傷を細菌感染によるものと誤って認識し,IL - 1βの産生を惹起する.NLRP3インフラマソームが炎症を誘導したとしても原因となった粒子状物質が排除されるわけではないため,炎症は収まらず,慢性化して組織の破壊を引き起こす.痛風関節炎の病態においては,関節腔内に生じた尿酸塩結晶を貪食したマクロファージにおいて,NLRP3インフラマソームが誤って活性化してIL - 1β放出を誘導する.IL - 1βは,周囲の細胞からのケモカイン産生を誘導し,関節腔内へ遊走・集積した好中球によって関節組織が損傷する(図2).βアミロイドリステアA群・B群連鎖球菌尿酸塩結晶アスベストファゴソーム・リソソーム膜損傷NLRP3インフラマソーム活性化図1ファゴソーム・リソソーム膜の損傷に応じたNLRP 3 インフラマソームの活性化リステリアや連鎖球菌は膜溶解毒素を産生し,ファゴソーム・リソソームの損傷を惹起する.NLRP3インフラマソームは,ファゴソーム・リソソームの損傷を病原体感染のシグナルとして感知し,炎症を介した生体防御応答を誘導する.一方で,NLRP3インフラマソームは,βアミロイドなどの自己由来重合体,尿酸塩結晶などの代謝物の結晶,アスベストなどの環境汚染物質によるファゴソーム・リソソームの損傷についても感知して活性化する.NLRP3インフラマソームが活性化してもこれらの粒子状物質が取り除かれるわけではないので,炎症は慢性化し,組織の損傷が引き起こされる.尿酸塩結晶NLRP3インフラマソームシクロオキシゲナーゼ活性化関節腔炎症性因子放出貪食好中球ケモカイン産生滑膜細胞など遊走マクロファージ骨骨滑膜炎症図2尿酸塩結晶によるNLRP 3 インフラマソームの活性化を介した痛風関節炎の発症過剰な栄養素の摂取により関節腔内に生じた尿酸塩結晶は,マクロファージなどのミエロイド系細胞に貪食される.貪食された尿酸塩結晶は,NLRP3インフラマソームなどの自然免疫機構を活性化し,サイトカインIL- 1βなどの炎症性因子が放出される.炎症性因子は滑膜細胞などの周囲の細胞を刺激し,ケモカインの産生を誘導する.ケモカインに応じて遊走してきた好中球は関節組織の破壊を引き起こし,痛風関節炎が発症する.