カレントテラピー 35-7 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.7 61669Ⅰ NLRP3インフラマソームとは─生体防御応答および痛風関節炎における働き─自然免疫機構は,異物のセンサーであるパターン認識受容体を介して病原体を感知し,サイトカインなどの炎症性因子による感染防御応答を誘導する1)~3).一方で,栄養素の過剰な摂取により体内で増加した代謝物のなかにもパターン認識受容体により異物として感知されるものがあり,現代病の代表格と言える生活習慣病の発症にはしばしば自然免疫機構の活性化が関与している2)~3).特に,NLRP3インフラマソームと呼ばれる自然免疫機構は,尿酸塩結晶などの代謝物の結晶に反応して活性化し,痛風などの生活習慣病の発症要因となることが明らかになり,注目されている2)~3).NLRP3インフラマソームは,NOD様受容体ファミリーに属するパターン認識受容体であるNLR familypyrin domain containing 3(NLRP3),アダプター因子であるapoptosis -associated speck -like proteincontaining a carboxy-terminal CARD(ASC)およびプロテアーゼであるcaspase- 1からなるタンパク質複合体である1)~3).活性化したNLRP 3インフラマソームは,caspase - 1による炎症性サイトカインであるinterleukin(IL)- 1β前駆体の切断とIL - 1β成熟体の細胞外への放出を誘導する.NLRP3インフラマソームの本来の役割は,マクロファージなどのミエロイド系細胞において,リステリアや連鎖球菌などの細菌の感染を感知し,炎症性サイトカインによる病原体の排除を誘導するものである.リステリアや連鎖球菌などの細菌を貪食した細胞においては,これらの細菌が産生する膜溶解毒素によりファゴソーム・リソソームの膜が損傷する.NLRP3インフラマソームは,このファゴソーム・リソソームの損傷を感知して活性化し,IL - 1βの放出を誘導する(図1).NLRP3インフラマソームを介して産生されたIL - 1βは,周囲の細* 徳島大学先端酵素学研究所炎症生物学分野教授高尿酸血症・痛風─ 診断と治療の新展開痛風関節炎の発症機序齊藤達哉*栄養素の過剰な摂取に起因する痛風などの生活習慣病は現代社会における健康問題となっており,その発症機序の解明と治療法の確立は重要な課題である.栄養素の代謝成分からなる尿酸塩結晶などの粒子状物質は,本来はわれわれを病原体から守るために存在する自然免疫機構により,異物として認識されてしまう.誤って活性化した自然免疫機構は,過度の炎症による組織の損傷を引き起こして,痛風などの生活習慣病の発症要因となる.NLRP 3 インフラマソームは,尿酸塩結晶などの粒子状物質に応じて活性化する代表的な自然免疫機構であり,サイトカインIL- 1βの放出を介して炎症を強く誘導する.本稿では,尿酸塩結晶によるNLRP 3 インフラマソーム活性化を介した痛風関節炎の発症機序についてまず解説した後に,痛風治療薬であるコルヒチンやジクロフェナクの作用機序についても解説する.