カレントテラピー 35-6 サンプル page 25/30
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カレントテラピー 35-6 サンプル
86 Current Therapy 2017 Vol.35 No.6588Use-dependent plasticity(UDP)とは慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室研究員 平本美帆慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室専任講師 川上途行1 はじめに使用依存的可塑性(use-dependent plasticity:UDP)は,特定の機能を担う神経細胞が繰り返し活動すると,同じパターンの活動が次に生じやすくなる現象のことで,神経細胞間の情報伝達を担うシナプスの結合性変化が関与していると考えられている.2 一次運動野におけるUDPの発見Nudoらはリスザルを用いて一次運動野(M1)に部分的な虚血を生じさせ,巧緻動作のトレーニングを行うことで運動麻痺の回復とM1の機能的地図の拡大を示した.また,ヒトにおけるUDPについては,短期間反復運動をした後に経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation:TMS)により誘発される母指の運動方向が反復運動を行った方向に誘発されることが報告されている.脳卒中患者を対象とした研究においても,constraint-induced movementtherapy(CI療法)後にTMSを用いて損傷側M1手指領域の拡大が報告されている.3 リハビリテーションの介入手法とUDPこのようなUDPの発見とともに,UDPによる可塑性変化により機能回復を促進させる手法として,近年ではさまざまなリハビリテーション手法が提唱されている.そのなかでもCI療法は代表的な介入手法といえるだろう.CI療法は,健側手を拘束して麻痺手の使用を強制的に促すことでdose(練習量)を増やし,UDPによる可塑性変化を促進させ,機能改善を図る手法である.一方,CI療法の適応よりもさらに麻痺手の随意性が低い脳卒中患者に対しては,Hybrid Assistive NeuromuscularDynamic Stimulation therapy(HANDS療法)という随意運動介助型電気刺激装置と手関節固定装具を用いた治療法がある.HANDS療法では,電気刺激装置により手指伸展をアシストし,装具で屈筋群の痙縮を抑制しながら麻痺手のdoseを高めることが可能である.さらに,手指伸筋の筋活動を認めない重度の運動麻痺患者においては,脳波計を用いて感覚運動皮質の活動を検出し,皮質から筋への神経経路を活性化させてdoseを高めるbrain -machineinterface(BMI)治療なども新たな治療法として注目されている.4 課題設定の重要性機能回復を目指し,UDPによる可塑性変化を促進させるためにはdoseが必要であるが,近年では単純にdoseを増やすだけではなく,最適な難易度設定や文脈(context)が重要とされている.CI療法においては課題指向型アプローチやtransfer packageを用いて,適切な課題設定や日常生活動作(ADL)への汎化を促すことが重要であると報告されている.HANDS療法においても上記の機器と装具を一日8時間装着し,作業療法などの訓練中のみならず,ADLという文脈のなかで麻痺手の使用を促し,doseを増やすことで麻痺手の機能回復を図っている.脳卒中リハビリテーションの最近の動向─ 障害に対する新たなアプローチ