カレントテラピー 35-6 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.6 81583Ⅰ リハビリテーションでの薬物投与の意義脳卒中などの中枢性運動麻痺に対するリハビリテーションでは,運動反復を主とするリハビリテーション訓練が行われる.これにより脳の可塑性が誘導され,脳の再構築が起こり,機能回復につながる.ここで重要なことは,脳の可塑性をいかに効率よく引き出すかということである.訓練方法を工夫することも重要であるが,その他,薬物の使用も期待される.薬物投与で脳を変化しやすい状態にしておき,このときにリハビリテーション訓練を行うと脳の可塑性が容易に誘導され,訓練効果を促進させることができると考えられる(図1).中枢性運動麻痺に対する薬物で上記と異なる視点で投与されるのは,痙縮を改善する目的で投与される薬物である.痙縮は筋緊張が亢進した状態で,中枢性運動麻痺では急性期後にみられることが多い.痙縮のために運動コントロールが損われる.痙縮治療は脳の可塑性を誘導することが直接の目的ではないが,痙縮を改善することで運動機能が向上し,訓練効果を促進させることができる.その結果として,訓練量の増加などにより脳の可塑性が誘導されやすくなる可能性がある.本稿では中枢性運動麻痺に対して,脳の可塑性を誘導する薬物と中枢性運動麻痺の回復を阻害する薬物について述べたい.痙縮に対する薬物については他稿で述べられているので省略する.なお,脳の可塑性を誘導する薬物は本邦での保険診療の適用はないので,留意されたい.神経薬理学のリハビリテーションへの応用─中枢性運動麻痺について─生駒一憲** 北海道大学病院リハビリテーション科教授脳卒中リハビリテーションの最近の動向─ 障害に対する新たなアプローチ中枢性運動麻痺に対するリハビリテーションでは脳の可塑性を効率よく引き出すことが重要である.脳の可塑性を誘導する薬物として神経伝達物質のモノアミン(ノルアドレナリン,セロトニン,ドパミンなど)の作用を増強する薬物が考えられている.D-amphetamineはモノアミン作用をもつ薬物であるが,中枢性運動麻痺に対する改善効果については賛否両論がある.これに対し,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)はセロトニン作用をもち,中枢性運動麻痺の治療薬として有望視されており,メタ解析でもその有用性が示されている.レボドパは脳内でドパミン,ノルアドレナリンに代謝されるため,中枢性運動麻痺に有用な可能性がある.Cerebrolysinは神経ペプチド製剤であるが,有効との報告が散見される.一方,モノアミン作用を減弱させる薬物や神経系に抑制的に働く薬物は,中枢性運動麻痺の回復を妨げる可能性があるので注意を要する.a b s t r a c t