カレントテラピー 35-5 サンプル page 25/32
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カレントテラピー 35-5 サンプル
78 Current Therapy 2017 Vol.35 No.5482ピンの代謝酵素であるCYP1A2を誘導するため,オランザピンの血中濃度を約半分に低下させる23),24).そのため患者が喫煙しているかどうかを使用時に確認すべきである.3 アリピプラゾールについてアリピプラゾールは統合失調症治療薬として2001年に発売され,2012年に「双極性障害における躁症状の改善」の適応が,2013年にうつ病への付加療法の適応が追加された.双極性うつ病の急性期や維持療法への適応は取得していない.双極性うつ病急性期に対してはプラセボへの優位性を示すことができず,有効性を確認することができなかった12).そのため双極性うつ病の急性期の治療には推奨できない.躁病相急性期に関しては有効性・忍容性ともにプラセボと比較し優れていた13).リチウムとの比較では有効性・忍容性ともに同等であった13).BAP15)では選択肢になり得るとされ,CANMAT16)ではfirst lineに挙げられている.維持療法に関してはBAP15)では推奨され,CANMAT16)においては双極Ⅰ型ではfirst line,双極Ⅱ型ではthird lineに挙げられている.しかし近年のネットワークメタアナリシスにおいて,プラセボに対して有意な有効性は示せなかった14()表3).この結果を受けてか,近年改訂されたRoyal Australian andNew Zealand College of Psychiatrists(RANZCP)ガイドライン25)では,アリピプラゾールは維持薬として推奨されていない.今後,改訂される各種ガイドラインではアリピプラゾールの維持療法における位置づけは変わってくる可能性がある.これらの結果からアリピプラゾールは躁病相には有効な薬剤であるが,躁病相が寛解した場合は他の薬剤に変更することも考慮すべきである.Ⅳ おわりに双極性障害の変遷および問題点と,近年保険適用となった3剤について,適応や有効性,臨床的特徴を紹介した.ラモトリギンはうつ病相,寛解維持,オランザピンはうつ病相,躁病相,寛解維持,アリピプラゾールは躁病相に有効で,どの薬剤も有効な病相ではリチウムと比較しても同等の効果を有していた.それぞれ有効な病相や忍容性が異なっており,臨床医は患者の病相や忍容性を考慮し各薬剤を選択すべきである.また,当然ながら双極性障害の治療にあたっては,適正な診断が前提となる.そのため目前の患者の症状を十分に吟味し過少や過剰診断をせず,過不足なく診断することはもちろん,必要時には診断変更もためらってはならない.また今回は薬物治療のみしか言及できなかったが,双極性障害は疾病教育,心理療法,環境調整などにも十分な知識をもって治療にあたるべきである.参考文献1) Leonhard K:Aufteilung der endogenen Psychosen. Akademie-Verlag, Berlin, 19572) Dunner DL, Gershon ES, Goodwin FK:Heritable factors inthe severity of affective illness. Scientific Proceedings of theAmerican Psychiatric Association 123:187-188, 19703) Akiskal HS, Mullya G:Criteria for the “soft” bipolar spectrum:treatment implications. Psychopharmacol Bull 23:68-73, 19874) Akiskal HS:The prevalent clinical spectrum of bipolar disorders:beyond DSM -Ⅳ. J Clin Psychopharmacol 16(2Suppl):4S-14S, 19965) Akiskal HS, Pinto O:The evolving bipolar spectrum.PrototypesⅠ, Ⅱ, Ⅲ, and Ⅳ. Psychiatr Clin North Am 22:517-534, 19996) Ghaemi SN, Ko JY, Goodwin FK:The bipolar spectrum andthe antidepressant view of the world. J Psychiat Pract 7:287-297, 2001うつ病相急性期躁病相急性期維持療法プラセボとの比較有用性なし有効性○ 忍容性○ 有用性なしリチウムとの比較有用性なし有効性= 忍容性= 有用性なしBAPでの推奨度注1 推奨なし選択肢になり得る推奨注3CANMATでの推奨度推奨なしBPⅠfirst line BPⅠfirst lineBPⅡthird line表3アリピプラゾールの位置づけ凡例は表1 と同様.注1:維持療法を行っていない場合,注3:リチウムに有効性・忍容性がないとき推奨