カレントテラピー 35-5 サンプル

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76 Current Therapy 2017 Vol.35 No.5480るうつ病相の急性期治療12),躁病相の急性期治療13),維持療法14)それぞれのネットワークメタアナリシスの結果から,有効性および双極性障害の標準的治療薬であるリチウムとの比較を紹介する.また,近年改訂されたBritish Association for Psychopharmacology(BAP)15)やCanadian Network for Mood and AnxietyTreatments(CANMAT)16)のガイドラインでの位置づけも紹介しつつ,各薬剤の特徴を述べたい.1 ラモトリギンについてラモトリギンは本邦では2008年に抗てんかん薬として承認を取得し,2011年に「双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制」の承認を取得した.保険適用上は双極性障害の両急性期には認められていない.ラモトリギンは双極性うつ病の急性期治療においてはプラセボと比較して有意にうつ状態を改善し,躁転の危険性および離脱における忍容性に関してはプラセボと同等であった12).リチウムとの比較ではうつ症状の改善度,躁転の危険性および離脱における忍容性に関して有意差は認めなかった12).双極性うつ病においてBAP15)では推奨薬に挙げられ,CANMAT16)でも双極Ⅰ型でfirst lineに,双極Ⅱ型でsecond lineに挙げられている.躁病相の急性期治療においてはプラセボと有意差を示すことができず13),躁病相の急性期治療には推奨できない.維持療法ではプラセボと比較し双極性障害の病相予防効果を有し,忍容性では差がなかった14).また,その予防効果はうつ病相予防効果であり,躁病相の予防効果は認められなかった14).リチウムと比較すると有効性は同等で,忍容性はラモトリギンが有意に優れていた14).BAP15)では双極Ⅰ型では抗躁薬と併用で,双極Ⅱ型では単剤で推奨され,CANMAT16)では双極Ⅰ型,Ⅱ型ともにfirst lineに指定されている(表1).これらからラモトリギンの特徴としては,うつ病相の急性期治療およびうつ病相の予防には効果を有するが,躁病相の急性期および躁病相の予防の効果は期待できない.そのため臨床で使用する場合には,うつ病相急性期やうつ病相を繰り返す患者には有効性が期待できる反面,躁病相が病態の中心となる患者への使用は推奨できない.維持療法時の忍容性はリチウムに優り全体的には高いが,薬疹が問題になる.皮膚障害のリスクファクターとしては2015年の日本うつ病学会などの3学会ステートメントで述べているように,①用法・用量の非遵守例,②バルプロ酸併用例,③他の抗てんかん薬での薬疹の既往歴,④13歳以下の小児,⑤投与8週以内,が考えられている17)~19).特に①の非遵守例での際に死亡に至る重症化が顕著となっている.国内臨床試験でバルプロ酸併用時に承認用量より高い用量群では皮膚障害の発現率は10.4%で,承認された用法・用量群は2.9%であり,用法・用量を遵守しない場合では皮膚障害の発現率が高いことが知られていた.2012年1月の「PMDAからの医薬品適正使用のお願い」20)によれば2008年12月から2011年11月までにラモトリギンによる重篤な皮膚障害発現例が397例報告されている.そのうち251例で用法・用量が確認されたが,約6割の152例は承認された用法・用量を逸脱していた.さらに逸脱群では中毒性表皮壊死融解症が5.9%,スティーブンス・ジョンソン症候群が21.7%と用法・用量を遵守した群のそれぞれ2%,20.2%に比べ多かった.重篤な皮膚障害により16例の死亡例があり,2015年2月にはブルーレター(安全性速報)が配布され,用法・用量を遵守するよう注意喚起がなされた.ラモトリギンはチトクロームP450による代謝でなくグルクロン酸抱合されるのが特徴であり,バルプロ酸のようなグルクロン酸抱合を受ける薬剤との併うつ病相急性期躁病相急性期維持療法プラセボとの比較有効性○ 忍容性= 有用性なし有効性○注4 忍容性=リチウムとの比較有効性= 忍容性= 有用性なし有効性= 忍容性○BAPでの推奨度注1 推奨推奨なしBPⅠ推奨注2, 3BPⅡ推奨注3CANMATでの推奨度BPⅠfirst lineBPⅡsecond line推奨なしBPⅠfirst lineBPⅡfirst line表1ラモトリギンの位置づけ○有意に優れている=同等注1:維持療法を行っていない場合,注2:通常抗躁薬と併用,注3:リチウムに有効性・忍容性がないとき推奨,注4:躁病相予防効果なし