カレントテラピー 35-5 サンプル

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74 Current Therapy 2017 Vol.35 No.5478Ⅰ はじめに双極性障害はうつ病相と躁病相を繰り返す気分障害である.そのため双極性障害の治療目標は,うつ病相急性期においてはうつ症状の改善,躁病相急性期では躁症状の改善,そして寛解期ではその維持となる.双極性障害治療薬としてはいずれの病相でも効果を有するのが理想的であるが,各薬剤はそれぞれ得意・不得意な病相がある.本稿では,近年保険適用となったラモトリギン,オランザピン,アリピプラゾールの各病相における有効性と双極性障害の標準的治療薬であるリチウムとの比較を最近のネットワークメタアナリシスから紹介し,また近年改訂された海外のガイドラインでの位置づけに言及する.さらに双極性障害の理解を深めるため,双極性障害の概念の変遷と現在の問題を当初に簡潔に述べる.本稿が読者の方々の双極性障害治療の診断・治療の一助になれば幸いである.Ⅱ 双極性障害の疾患概念の変遷と問題点双極性障害は古くから精神疾患と認識されていたが,近年においてその概念はめまぐるしく変化している.この概念の変遷を知ることは,双極性障害を理解するうえで非常に重要である.Hippocratesの時代には,すでにメランコリーとマニーが精神疾患と認識され,古代ギリシャのAretaeusはメランコリーはマニーの始まりと記載し,一見この正反対の状態は同一疾患であると考えた.双極性障害概念の嚆矢である.そして約100年前にKraepelinが現代の単極うつ病から双極性障害をも網羅する「躁うつ病」概念を確立させ,単極性うつ病から双極性障害を含む気分障害一元論新たに適応になった双極性障害治療薬塩田勝利** 自治医科大学精神医学教室准教授うつ疾患の診断と鑑別─双極性障害を中心に双極性障害の治療薬として近年,ラモトリギン,オランザピン,アリピプラゾールの3剤が保険適用となった.最近の研究結果からラモトリギンはうつ病相および寛解維持に有効,オランザピンはうつ病相,躁病相,寛解維持いずれの相でも有効であった.アリピプラゾールは各種ガイドラインで寛解維持療法に推奨されることが多いが,今回紹介した研究では維持療法において有効性は認めず,躁病相のみ有効であった.これを踏まえ,アリピプラゾールの維持療法の位置づけは今後変更される可能性がある.これら3剤の有効な病相や忍容性はそれぞれ異なっており,患者の病相や忍容性を考慮し選択すべきである.また双極性障害の治療にあたっては,適正な診断がなされることが前提となる.そのため目前の患者の症状を十分に吟味し双極性障害の過少や過剰診断をせず,過不足なく診断することが必要である.a b s t r a c t