カレントテラピー 35-5 サンプル

カレントテラピー 35-5 サンプル page 13/32

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 35-5 サンプル の電子ブックに掲載されている13ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 35-5 サンプル

60 Current Therapy 2017 Vol.35 No.5464が報告されている.Katoらは22),リンパ芽球を用いて17の遺伝子発現を調べ,ANK3 , POLG1 , RASGRP1の3つの遺伝子発現を用いると,ファーストセットにおいて感度76%,特異度85%,セカンドセットにおいて感度76%,特異度85%で,双極Ⅰ型群と健常者群を区別できたと報告した.Munkholmらは23),単球を用いて19の遺伝子発現を調べ,KLF12 , PGAM1 , POLG ,OGG 1 , GSK 3 B の5つの遺伝子発現を用いると,ファーストセットにおいて感度63%,特異度60%,セカンドセットにおいて感度59%,特異度80%で,急速交代型双極性障害群と健常者群を区別できたと報告した.Ⅶ DNAメチル化修飾エピジェネティクスとはDNAの塩基配列によらない遺伝子発現制御に関わる機構である.DNAメチル化はエピジェネティクス機構のひとつであり,動物実験では,幼少期のストレスなどの環境要因が特定の遺伝子のDNAメチル化に影響を与え,遺伝子発現や行動を変えることが報告されている24),25).末梢血における双極性障害のDNAメチル化の異常は,BDNF ,SLC6A4 遺伝子等,これまでに複数報告されているが26)~28),メタ解析した論文報告はない.近年,われわれは,特定の遺伝子によるDNAメチル化の組み合わせがうつ病の診断補助マーカーになる可能性を示した29).現在,徳島大学精神科では,同様の手法を用いて,双極性障害においても複数の遺伝子におけるDNAメチル化の組み合わせにより,双極性障害群と健常者群を区別できるかどうかの検討を行っている.Ⅷ おわりに末梢血は,採取が容易で患者への侵襲が少なく,臨床現場においても使用しやすい試料であるため,血液における疾患の生物学的指標は,バイオマーカーとして臨床応用が期待できる.双極性障害研究で生物学的指標を困難にしている要因として,採血時の治療薬(早期に診断することが難しいため採血時に治療を受けていることが多い)や採血時の気分の状態(躁病相,正常気分,うつ病相)があり,近年は,病期分類の重要性(病期による差異)も提唱されている30).真の双極性障害の生物学的マーカー同定には,詳細な臨床情報のついた大規模サンプルの解析や疾患特異性(特に単極性うつ病との鑑別)に注目した研究が必要であると思われる.今後の研究成果に期待したい.【謝辞】ここで紹介した研究の一部は,厚生労働科学研究費・日本医療研究開発機構研究費「DNAメチル化修飾に着目したうつ病のマーカー作成─双極,単極,治療抵抗性うつ病の識別を目指して─」(大森哲郎)と科学研究費補助金基盤研究C(研究課題番号:15K09809)(沼田周助)から一部助成を受けたものである.参考文献1)Ferrari AJ, Stockings E, Khoo JP, et al:The prevalence andburden of bipolar disorder:findings from the Global Burdenof Disease Study 2013. Bipolar Disord 18:440-450, 20162)Daban C, Colom F, Sanchez-Moreno J, et al:Clinical correlatesof first-episode polarity in bipolar disorder. Compr Psychiatry47:433-437, 20063)Judd LL, Akiskal HS, Schettler PJ, et al:The long-term naturalhistory of the weekly symptomatic status of bipolar Idisorder. Arch Gen Psychiatry 59:530-537, 20024)Judd LL, Akiskal HS, Schettler PJ, et al:A prospectiveinvestigation of the natural history of the long-term weeklysymptomatic status of bipolar Ⅱ disorder. Arch Gen Psychiatry60:261-269, 20035)Fiedorowicz JG, Endicott J, Leon AC, et al:Subthresholdhypomanic symptoms in progression from unipolar majordepression to bipolar disorder. Am J Psychiatry 168:40-48,20116)Lu B, Pang PT, Woo NH:The yin and yang of neurotrophinaction. Nat Rev Neurosci 6:603-614, 20057)Rao S, Martinez-Cengotitabengoa M, Yao Y, et al:Peripheralblood nerve growth factor levels in major psychiatric disorders.J Psychiatr Res 86:39-45, 20178)Fernandes BS, Molendijk ML, Kohler CA, et al:Peripheralbrain-derived neurotrophic factor(BDNF)as a biomarkerin bipolar disorder:a meta-analysis of 52 studies. BMC Med13:289, 20159)Tseng PT, Chen YW, Tu KY, et al:State-dependent increasein the levels of neurotrophin -3 and neurotrophin -4/5 inpatients with bipolar disorder:A meta-analysis. J PsychiatrRes 79:86-92, 201610)Goldsmith DR, Rapaport MH, Miller BJ:A meta-analysis of