カレントテラピー 35-5 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.5 59463結果,双極性障害群の血中BDNFレベルが,1)健常者群と比較して躁病相ならびにうつ病相で低く,正常状態では変わらなかったこと,2)躁病相やうつ病相の精神症状の重症度と負の相関があったこと,3)急性期の躁状態の治療後に増加したこと,4)疾患の罹病期間と有意な関連がなかったこと,を報告した.Tsengらは9),血中NT- 3およびNT- 4/5と双極性障害の関連研究のメタ解析を行った(8論文,双極性障害患者465名と健常者353名).結果,双極性障害群の血中NT- 3, NT- 4/5のいずれも,1)健常者群と比較してうつ病相で有意に上昇していたが,正常気分や躁病相では違いを認めなかったこと,2)うつ病相の精神症状の重症度や罹病期間に有意な関連があったこと,を報告した.Ⅲ サイトカインGoldsmithらは10),双極性障害患者を急性期(10論文)と慢性期(16論文)に分けて,メタ解析を行った.結果,1)急性期の躁病相の双極性障害患者群は健常者群と比較して,サイトカインのinterleulin - 1receptor antagonist(IL-1 RA),I L- 6,soluble interleukin-2 receptor(sIL- 2R),tumor necrosis factor-α(TNF -α)の上昇を認めたこと,2)急性期躁状態の治療後IL- 1RAが低下したこと,3)慢性期の正常気分の双極性障害患者群は健常者群と比較して,IL- 1β,IL- 4,IL- 6,IL- 10,sIL- 2R,sIL- 6R,sTNF -R1の上昇を認めたが,慢性期のうつ病相の双極性障害患者群では健常者群と違いを認めるサイトカインは認めなかったこと,を報告した.Ⅳ CRPC-reactive protein(CRP)は,細菌感染や癌,火傷などの組織障害などにより上昇する急性期反応性タンパクのひとつである.Fernandesらは11),CRPと双極性障害の関連研究のメタ解析を行った(27論文,双極性障害患者2,161名と健常者81,932名).結果,双極性障害患者群の血中CRP濃度が,1)健常者群と比較して,躁病相,正常気分,うつ病相,のいずれも上昇したこと(躁病相のCRP濃度は他の2つの病相よりCRP濃度は高い),2)躁病相やうつ病相の精神症状の重症度に関連を認めなかったこと,3)躁病相やうつ病相の改善後に低下したこと,を報告した.Ⅴ Oxidative stressマーカー酸化ストレスは,「生体内の酸化反応と還元反応のバランスが崩れ,前者に傾いた状態」と定義され,生体の構成成分であるタンパク質,脂質,糖質,DNAと反応してこれらを変性させるとともに,過酸化体を産生して反応を拡大させる12).Brownらは13),8つの酸化ストレスマーカー(superoxide dismutase, catalase,protein carbonyl, glutathione peroxidase,3-nitrotyrosine, lipid peroxidation, nitric oxide,DNA/RNA damage)と双極性障害の関連研究のメタ解析を行った(27論文,双極性障害患者971名と健常者886名).結果,双極性障害患者群は健常者群と比較して,lipid peroxidationとnitric oxideおよびDNA/RNA damageの上昇を認めたこと,を報告した.Ⅵ 遺伝子発現末梢血と脳での遺伝子発現はある程度の高い相関が認められることが知られており14),15),末梢血の遺伝子発現は診断補助マーカーのツールとして有望な生物学的指標のひとつである.双極性障害の死後脳の遺伝子発現研究では,アレイ研究のメタ解析が行われ(10論文,双極性障害患者57名と健常者60名),FKBP5 やWSF1 を含む11の遺伝子の前頭葉皮質における発現異常が明らかになっている16).一方,双極性障害の末梢血球の遺伝子発現研究は,GRα, PDE4B ,STAB1 等,複数の特定の遺伝子における発現異常が報告されているが17)~21),メタ解析した論文報告はない.近年,複数の遺伝子における発現量の組み合わせにより,双極性障害群と健常者群を区別できる可能性