カレントテラピー 35-4 サンプル page 24/28
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カレントテラピー 35-4 サンプル
80 Current Therapy 2017 Vol.35 No.4386頸動脈プラークとSNP大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科(代謝血管学寄附講座)講師 片上直人動脈硬化の進展には,高血圧,脂質異常,耐糖能障害,肥満,炎症,酸化ストレス,血栓促進傾向など多くの危険因子が関与している.そこで,これらの危険因子と関連する遺伝子を候補遺伝子とし,当該遺伝子上に存在する一塩基多型(SNP)などを用いて動脈硬化性疾患との関連を探索するケースコントロール関連分析が多数行われてきた.その結果,アンジオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子のイントロン16に存在する287bpのAlu配列の挿入/欠失多型,コレステロール逆転送系の重要な酵素cholesteryl ester transfer protein(CETP )遺伝子のI 405V多型とR 451Q多型,NAD(P)H oxidase p 22 phox遺伝子のC242T多型,ホモシステイン代謝関連酵素のひとつであるmethylenetetrahydrofolatereductase(MTHFR )遺伝子のC 677 T 多型をはじめ,多くの遺伝子多型が頸動脈硬化と関連することが報告されている.一方,ゲノムワイド関連解析(GWAS)は,全ゲノム領域に配置した数十~数百万ものSNPを用いて網羅的に相関解析を行う手法であり,これまで予想もされていなかった疾患関連遺伝子の同定が可能である.頸動脈硬化症に関連すると考えられる遺伝子(領域)としては,MAXdimerization protein 1(MXD1 ),lymphocyteantigen 96(LY96 ),abl interactor 2(ABI2 ),proprotein convertase subtilisin/kexin type 2(PCSK2 ),ryanodine receptor 3(RYR3 )などが同定されている.ただし,メタ解析や前向き試験等によって頸動脈硬化症との関連が十分に検証されたものはまだ少なく,多くの遺伝子に関しては,今後,検証を進めていく必要がある.また,動脈硬化等の多因子疾患においては個々の遺伝子多型の及ぼす影響は小さく,各個人における疾患発症リスクの予測は,単一の遺伝子多型の評価のみでは困難であることが明らかになってきた.そこで近年,複数の遺伝子多型の集積が疾患発症に及ぼす影響を検討しようという取り組みがなされている.例えば,酸化ストレスの亢進は動脈硬化の進展に重要な役割を担っているが,個体における酸化ストレスのかかりやすさも部分的には遺伝的に規定されている.このため,われわれは,酸化ストレスに関連する4つのSNPに注目し,その集積が糖尿病患者の頸動脈硬化に及ぼす影響について評価した.その結果,酸化ストレス促進アレルの集積は,頸動脈内膜中膜複合体(IMT)肥厚やその進展の独立した危険因子であることを明らかにした.さらに,動脈硬化の発症・進展に関与する可能性がある106種類の機能的な遺伝子多型とIMTとの関連を横断的に評価した.その結果,ACE遺伝子のDDジェノタイプとlymphotoxin α(LTA)遺伝子の252GGジェノタイプを併せもつ症例等では,著明なIMT肥厚が認められることが明らかになり,特定の多型の間には相乗効果があることが示唆された.頸動脈硬化症のリスク評価においては,複数の疾患感受性遺伝子多型の集積効果を考慮すべきであると考えられる.頸動脈プラークの診断と治療の動向─心血管イベント発症予防を目指した治療戦略