カレントテラピー 35-4 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.4 59頸動脈狭窄に対する対策365候性頸動脈狭窄症例を対象とした観察研究では,抗血小板薬の服用は,虚血性脳血管障害や心血管死などの発症率低下に関連しているとの報告もある20),21).頸動脈病変に対して,抗血小板薬の2剤併用は,微小塞栓信号(microembolic signal:MES)がある症例においては有用であるとの報告があるものの22),長期の併用療法により出血性合併症が増加するため,抗血小板薬の併用には十分に注意が必要である.無症候性頸動脈狭窄症のなかでも,将来症候化しやすい狭窄病変もあるため,そのようなハイリスク症例を抽出することが重要である.近年の画像診断の進歩により,プラークの性状評価の重要性が高まってきており,不安定プラークの抽出が重要である.頸動脈プラークの最も簡単な評価は頸部血管超音波検査であるが,そのほかにもCTアンギオグラフィー,MRI,FDG-PETなどがある.それぞれのモダリティを利用して総合的に判断を行う必要がある.特に,fibrous capの破綻やプラーク内出血とその大きさ,lipid-rich necrotic coreを有するunstable lesionsは,脳卒中やTIAのイベント発生率と有意に関係することが報告されている23),24).頸動脈エコー検査でのプラーク性状を観察した際に認められる低輝度プラークは,脂質に富んでおり,プラーク内出血を伴うような病理組織と関連があるといわれている.通常のBモードだけでは見落としをしてしまう危険性があるため,カラードプラを用いるなど多角的な確認を行う必要がある(図2).また,低輝度プラークや潰瘍形成はMESの危険因子とされ,無症候性頸動脈狭窄症例において,経頭蓋超音波検査で,同側の中大脳動脈にMESを認める場合には,同側の脳梗塞の発症率が増加するとの報告もある25),26).そのほかにも頭部CT,MRIによる無症候性脳虚血病変,脳血流検査による脳血管反応性の低下は,同側脳梗塞の発症率が高くなることが報告されている27).経過観察中に狭窄率が進行する場合も,有意に脳梗塞を発症しやすいとされているため3),そのような症例においては外科治療を考慮してもよいと考えられる.4 内科治療,外科治療の適応の実際無症候性頸動脈狭窄症例に対して,積極的内科治療に加えて,外科治療を検討する際,患者の生命予後,外科手術のリスクなどを十分に検討のうえ,治療方針を決定する必要がある.九州医療センターの脳血管センターでは,健康寿命の延伸を念頭に,カンファランスで協議を重ねたテーラーメイドな医療を実践している.図3は当センターのカンファランスの際に用いる症例要約シートである28).内科治療か血行再建術かはある程度判断ができるとしても,CASかCEAかは,判断に迷うことも多い.CASは低侵襲なるも抗血小板薬依存度が高く,CEAは侵襲が高いが抗血小板薬依存度が低いといった両者の特徴に,さまざまな患者背景,希望を加味して治療方針を決定する必要がある.そのため,症例ごとに内科治療,外科治療のどちらが最適か,脳血管内科,脳血管内治療科,脳神経外科が協議を行い決定している.また,たとえ手術適応基準を満たしていても,重度心肺機能低下,高度腎障害,全身麻酔ハイリスク,虚弱高齢者で健康寿命を損ねる合併症リスクがあまりに高い場合は,現状維持の観点から内科治療の選択を行うこともある.Ⅴ おわりに高齢化社会を迎え,これからもさまざまな全身身体合併症をもった無症候性頸動脈病変の患者が増加すると考えられる.無症候性頸動脈病変に対しては,まずは内科治療を十分に行い,そのうえで,健康寿命を損ねる合併症リスクを十分に考慮しながら,外科的な治療適応を検討する必要がある.参考文献1)de Weerd M,Greving JP, Hedblad B, et al:Prevalence ofasymptomatic carotid artery stenosis in the general population:an individual participant data meta -analysis. Stroke41:1294-1297, 20102)Taussky P, Hanel RA, Meyer FB:Clinical considerations inthe management of asymptomatic carotid artery stenosis.Neurosurg Focus 31:E7, 20113)Muluk SC, Muluk VS, Sugimoto H, et al:Progression ofasymptomatic carotid stenosis:a natural history study in1004 patients. J Vasc Surg 29:208-214, 19994)Liapis C, Kakisis J, Papavassiliou V, et al:Internal carotidartery stenosis:rate of progression. Eur J Vasc EndovascSurg 19:111-117, 2000