カレントテラピー 35-4 サンプル page 17/28
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カレントテラピー 35-4 サンプル
54 Current Therapy 2017 Vol.35 No.4360Ⅰ はじめに無症候性頸動脈狭窄症は,頸部血管雑音,冠動脈疾患・末梢動脈疾患・肺癌などの術前精査,非特異的なめまい・ふらつきを契機に施行された頸部血管エコー検査などで指摘されることが多い.近年は,無症候性頸動脈病変に対する抗血小板薬や動脈硬化リスク管理を厳格に行う積極的内科治療の効果が明らかになってきている.内科治療を行う際に,狭窄が進行する例,症候性となりやすい症例を抽出することが重要である.本稿では,無症候性頸動脈狭窄症の疫学や脳卒中発症率の時代的推移,ならびに実際の治療法について概説する.Ⅱ 無症候性頸動脈狭窄症の疫学一般住民を対象とした4つの試験のメタ解析の結果によると,無症候性頸動脈狭窄症は,50%以上の中等度狭窄が男性で0.2~7.5%,女性で0~5.0%,70%以上の高度狭窄が男性で0.1~3.1%,女性で0~0.9%の頻度であり,女性よりも男性が多く,加齢とともに増加する(図1)1).また,冠動脈疾患患者の10~30%,末梢動脈疾患患者の25~49%に頸動脈狭窄症を合併しているとされている.頸動脈狭窄症の狭窄率の進行は,報告によってさまざまであるが,4~29%とされており,頸動脈狭窄の進行予測因子としては,高血圧,頸動脈高度狭窄,対側病変,冠動脈疾患,heterogeneous plaqueなどが報告されている2)~5).*1 独立行政法人国立病院機構九州医療センター臨床研究センター/脳血管センター/脳血管・神経内科*2 独立行政法人国立病院機構九州医療センター臨床研究センター/脳血管センター/脳血管・神経内科/臨床研究センター長頸動脈プラークの診断と治療の動向─心血管イベント発症予防を目指した治療戦略無症候性頸動脈狭窄の脳卒中発症リスクと内科管理中村麻子*1・岡田 靖*2無症候性頸動脈狭窄症は,頸部血管雑音,外科手術の術前精査,非特異的なめまい・ふらつき症状の精査を契機に指摘されることが多い.高度の無症候性頸動脈狭窄症に対して,外科的な血行再建術の有効性が報告されているが,抗血小板療法,降圧療法,脂質低下療法,血糖管理などを中心とした積極的内科治療の進歩に伴い,内科治療による脳梗塞の発症率が時代の経過とともに低下し,外科治療にも劣らない成績が出ている.そのため,無症候性頸動脈病変に対してはまずは積極的な内科治療を十分に検討することが勧められる.しかしながら,ある一定の割合で狭窄率が進行し,脳梗塞を発症するため,狭窄率が進行する高リスク群の抽出が重要である.高齢化社会に伴い,さまざまな全身合併症を有した無症候性頸動脈病変の患者が増加することが予想されるため,患者それぞれの全身状態を考慮に入れ,健康寿命の延伸を念頭に,治療を行うことが重要である.