カレントテラピー 35-4 サンプル

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34 Current Therapy 2017 Vol.35 No.4340最大IMTが1.5mm以上の場合をそれぞれ壁肥厚(プラーク)ありと定義した.その結果,総頸動脈体部最大IMT≧1.1mmの割合は,秋田と高知では27%,大阪では24%であり,集団間の差は有意ではなかった.一方,球部~内頸動脈最大IMT≧1.5mmの割合は,秋田46%,高知47%,大阪37%となり,集団間の差は有意であった(p=0.01).この球部~内頸動脈のプラークの頻度の地域差は,高血圧者の頻度,高血圧の持続期間,アルコール摂取量,および脳卒中発症率の地域差と一致した.以上のことから,頸動脈硬化の地域差をもたらした要因として,高血圧の長期間の持続が関連していると考えられるとともに,頸動脈硬化は健診においても把握可能な脳卒中発症のsurrogate markerである可能性が示された.Framingham Heart Studyでは,頸部エコー検査を実施した一時点の血圧値よりも,過去から現在にかけての血圧値の平均値のほうが,頸動脈狭窄との関連が強いことが示されている4).3地域を合わせて,最大IMT肥厚の関連要因を多重ロジスティック回帰分析により検討した結果を表1に示す.総頸動脈体部最大IMT≧1.1 mmには,加齢,高血圧,血清総コレステロール高値,HDLコレステロール低値,糖尿病との有意の正の関連が認められた.さらに脳卒中既往ありの者では総頸動脈体部肥厚のオッズ比が2.4と有意に高値であった.これに対して,球部~内頸動脈最大IMT≧1.5mmには,加齢,高血圧,喫煙が有意の関連因子であり,また,脳卒中既往ありの者のオッズ比は3.5と総頸動脈体部肥厚のオッズ比よりも一層高値を示した.CHSの成績5)では,高血圧と糖尿病は総頸動脈体部と球部~内頸動脈のIMT肥厚とほぼ同程度に関連し,喫煙は球部~内頸動脈のIMT肥厚により強く関連していた.コレステロールレベルの高いフィンランドにおけるKuopio IschaemicHeart Disease Risk Factor Studyでは,総頸動脈のIMT肥厚と血清LDLコレステロールとの正の関連を認めるものの,高血圧との有意の関連は認められなかった6).私どもの成績は,血圧レベルの高いわが国の農村部の高齢者では,頸動脈(特に球部~内頸動脈)に高血圧の影響がより強く出現していることを示唆するものである.喫煙に関しては,吹田研究において,喫煙に伴う血漿フィブリノーゲン高値および高感度CRP高値が頸動脈の最大IMT肥厚に関連していることが報告されている7).2 頸動脈プラークと脳卒中発症私どもは,上記の3地域の60~74歳男性住民の対象者数を計1,358人にまで増やし,その中で脳卒中や虚血性心疾患の既往のない1,289人を平均4.5年間追跡し,頸動脈硬化と脳卒中発症との関連を検討した8).その結果,表2に示すように,総頸動脈体部の最大IMTに関しては,第1四分位である0.77mm以下の群を対照基準とした場合,第4四分位である1.07mm以上の群での脳卒中発症リスクは年齢調整で3.5倍,多変量調整(年齢,最大血圧値,降圧剤服用の有無,心電図ST -T異常の有無,BMI,地域を調整)で3.0倍のハザード比(HR)を示した.総頸動脈最大IMT 1.07mm以上という数値は超音波検査の測定感度においては1.1mm総頸動脈最大IMT≧1.1mm球部~内頸動脈最大IMT≧1.5mmOR (95%Cl) p-value OR (95%Cl) p-value年齢,+4.0歳1.3 (1.1-1.5) <0.001 1.6 (1.4-1.8) <0.001身長,+0.06m 1 (0.8-1.1) 0.5 1 (0.9-1.1) 0.71高血圧(なし=0,あり=1) 1.8 (1.4-2.5) <0.001 1.9 (1.5-2.4) <0.001血清総コレステロール値,+34mg/dL 1.4 (1.2-1.7) <0.001 1.1 (1.0-1.3) 0.08HDL総コレステロール値,+15mg/dL 0.7 (0.6-0.8) <0.001 1 (0.9-1.2) 0.98糖尿病(なし=0,あり=1) 1.6 (1.0-2.4) 0.05 1.5 (1.0-2.3) 0.06喫煙(なし=0,あり=1) 1.3 (0.9-1.7) 0.11 1.6 (1.2-2.1) <0.001エタノール飲酒量,+21.6g/日0.9 (0.8-1.1) 0.2 1 (0.9-1.2) 0.9脳卒中既往(なし=0,あり=1) 2.4 (1.1-5.0) 0.02 3.5 (1.6-7.6) 0.002虚血性心疾患既往(なし=0,あり=1) 1.5 (0.6-4.2) 0.41 1.2 (0.4-3.5) 0.69表1頸動脈壁肥厚の関連要因─多変量調整オッズ比(OR)─秋田・大阪・高知,男性住民60~74 歳1 , 129 人