カレントテラピー 35-4 サンプル page 12/28
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カレントテラピー 35-4 サンプル
Current Therapy 2017 Vol.35 No.4 33339Ⅰ はじめに頸動脈硬化は種々の動脈硬化危険因子の影響を受けて進展する血管変化であり,心血管イベントのsurrogatemarkerとしても位置づけられている.頸動脈硬化は,内膜中膜複合体厚(intima media thickness:IMT)のびまん性肥厚やプラーク形成,血管内腔の狭窄などの形態をとる.頸動脈プラークの定義としては,わが国では日本脳神経超音波学会が2006年に公表した「頸部血管超音波検査ガイドライン」1)で示された定義がスクリーニング検査向けとして受け入れられている.すなわち,IMTを含み1.1mm以上の厚みを持つ部分をプラークと定義し,最大IMTはプラークを加えたIMTの最大値であると定義されている.本稿では,最大IMTを指標として地域住民を対象として実施したCIRCS(Circulatory Risk in CommunitiesStudy)の疫学調査成績と近年の国際的な頸部エコー共同研究成績を中心に,頸動脈プラークと動脈硬化危険因子,循環器疾患との関連について概説する.Ⅱ 地域住民における頸動脈プラークと動脈硬化危険因子,循環器疾患との関連(CIRCS)1 頸動脈プラークと動脈硬化危険因子CIRCSでは,秋田農村,大阪近郊,高知農村の循環器健診受診者のうち男性60~74歳の計1,129人を対象に頸部エコー検査を実施し,頸動脈の最大IMT値に関連する危険因子を横断的に検討した2).頸部エコー検査の手技は米国の頸部エコーの大規模コホート研究であるCardiovascular Health Study(CHS)の方法3)を採用した.すなわち,総頸動脈体部と球部~内頸動脈の最大IMTを計測し,総頸動脈体部では最大IMTが1.1mm以上の場合,球部~内頸動脈では*1 東京都健康長寿医療センター研究所研究部長/大阪がん循環器病予防センター*2 大阪がん循環器病予防センター/順天堂大学公衆衛生学講座特任准教授頸動脈プラークの診断と治療の動向─心血管イベント発症予防を目指した治療戦略頸動脈プラークと動脈硬化危険因子,心血管合併症との関連北村明彦*1・野田 愛*2わが国の地域の高齢男性住民を対象とした疫学研究により,頸動脈プラークの関連要因として,高血圧,喫煙,脳卒中既往,脂質異常症,糖尿病との有意の関連が示された.血圧レベルの高い農村部の高齢者では,球部~内頸動脈に高血圧の影響がより強く出現している傾向が認められた.球部~内頸動脈のプラークあり群はなし群に比し,脳卒中発症の多変量調整ハザード比が3 . 1倍と有意に高値であった.プラークの表面性状の不整が強い群で脳卒中の発症リスクは高く,また,低輝度プラークを含む非石灰化プラーク群では,石灰化プラーク群よりも高い脳卒中発症リスクを示した.国際共同研究等により,年齢,血圧値,血糖値,血中脂質,喫煙歴等の古典的危険因子で構成されるFramingham risk scoreを用いた循環器疾患発症の危険度予測モデルに内頸動脈プラークに係る指標を加えることにより,循環器疾患発症の予測能が改善することが報告された.