カレントテラピー 35-3 サンプル page 8/30
このページは カレントテラピー 35-3 サンプル の電子ブックに掲載されている8ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。
概要:
カレントテラピー 35-3 サンプル
Current Therapy 2017 Vol.35 No.3 11致死性不整脈の管理211環虚脱からの速やかな離脱を成功させる鍵となる.今回,アミオダロンとリドカインの優劣については,結論づけることはできない.特筆すべきは,有害事象に関して体外ペーシングを必要とした患者の割合がアミオダロン群で最も多かったという事実で,有害事象の回避のためにはむしろリドカインのほうが有利な可能性を示唆するかもしれない.本文内に詳細な考察は述べられていないが,ペーシングの施行は徐脈性不整脈あるいは過度なQT延長の存在を意味し,その発生要因には複雑な薬理作用が関与するものと類推される.アミオダロンのNa+チャネルに対する抑制作用は,リドカインやメキシレチンの抑制作用と同様に興奮伝導を遅延させる.Ca2+チャネルに対しては,L型CaチャネルのみならずT型Caチャネルの遮断作用も有することから9),洞房結節自動能の抑制や房室伝導の抑制といった徐拍化作用を呈する.そのほか心収縮力の抑制や血圧低下をもたらし,α遮断作用と相まって陰性変力作用が増強する.さらには,洞房結節に多く発現するHCN 4チャネルに対しても強力な抑制作用を有しており,徐脈を惹起するリスクがある10).本研究では,アミオダロン溶解液として低血圧を起こしにくい溶媒(Nexterone, Baxter Healthcare)が使用された.それまでに頻用されていたCordaroneⅣ(ポリソルベート80+ベンジルアルコール)11)では,低血圧の副作用が大きな問題となっていたことから,少なくとも溶媒液による血管拡張作用は軽減できていたと考えられる.しかし心拍再開後の低血圧に関する記載はなく,アミオダロンの薬理作用に起因する血圧低下は評価できない.Nexterone製剤が使用できない国々(わが国も含まれる)においては陰性変力作用の発現に対してより慎重な注意を払う必要がある.日本におけるアミオダロン使用の実態について,日本救急医学会関東地方会主導で行われた心肺停止患者の調査研究〔Survey of Survivors after Cardiac Arrestin the Kanto Area(SOS-KANTO)2012 study〕から,アミオダロンの用量別効果について検証した結果を以下に紹介する.Ⅲ SOS-KANTO 2012 studyわが国におけるアミオダロン注の使用認可時(2007年6月),初回投与法は緩徐静注(125mg/10分)と定められていた12).ところが救急現場でのアミオダロン緩徐静注法は現実に即さない面もあることから,AHAガイドラインに基づいて「初回投与に300 mg急速静注」を行っても良いと定められた(2013年).その結果,緩徐投与,300mgボーラス投与に加えて150mgボーラス投与など,複数の投与法が混在することとなった.SOS-KANTO 2012 study多施設共同観察研究では,アミオダロン初回投与量における効果の違いを明らかにするため,電気的除細動抵抗性のVF/VT1,433例を抽出し,抗不整脈薬を単剤で使用した500例を対象に,生存入院および24時間生存を検討した13).対象は,リドカイン群73例,ニフェカラント群47例,アミオダロン低用量群(125mg/10分緩徐投与,150mgボーラス投与)173例,アミオダロン高用量群(300mgボーラス投与)207例の4群に分類された.多変量ロジスティック回帰分析によりニフェカラント群とアミオダロン低用量群における生存入院および24時間生存はリドカイン群に比較して有意に優れていた(図2).第2の解析として同様の母集団を用いて,抗不整脈が長期予後に与える影響を検証した14).上述したVF/VT患者1,433例のうち抗不整脈薬使用(リドカイン,ニフェカラント,アミオダロン)の有無に関する記載があった1,350例を対象とし,抗不整脈薬の非投与群747例,投与群603例に分類した.多変量ロジスティック回帰分析による1カ月生存は,抗不整脈薬投与群でOR 1.76(p=0.02)と高値であった(図3).患者背景を調整するために傾向スコアマッチングを用いて396組を抽出し,ロジスティック回帰分析を施行した.抗不整脈薬投与群における1カ月生存はOR1.92(p<0.01),1カ月脳機能良好はOR 1.44(p=0.26)であった.これより抗不整脈薬投与により1カ月生存は改善する可能性が示唆されが,脳機能予後は有意差を生じなかった.神経学的予後解析においては