カレントテラピー 35-3 サンプル

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8 Current Therapy 2017 Vol.35 No.3208Ⅰ はじめに米国心臓協会(American Heart Association:AHA)による心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン20151),2)では,難治性あるいは再発性の心室細動(ventricular fibrillation:VF)/無脈性心室頻拍(ventricular tachycardia:VT)について,2010年度版に引き続きアミオダロンが推奨されている(図1).勧告内容に多大な影響を及ぼしたエビデンスとしては,1999年のARREST試験3)と2002年のALIVE試験4)が挙げられる.両試験は院外VF/VT患者を対象としたアミオダロンとプラセボ3)あるいはリドカイン4)との無作為化二重盲検試験である.入院生存においてはアミオダロンの有効性が証明されたが,生存退院率については対照群との間に有意差が認められなかったことからクラスⅡbの位置づけとされた.日本蘇生協議会5)も同様に,心拍再開率の改善を目的にアミオダロン300mgの投与を提案し(弱い推奨,中等度のエビデンス),アミオダロンが使用できない場合にはリドカイン1~1.5mg/kg,あるいはニフェカラント0.3mg/kgを使用しても良いと明記している(弱い推奨,非常に低いエビデンス).しかし,いずれの抗不整脈薬においても,生存退院や神経学的転帰を改善するという根拠は乏しい.そこで,かつてARREST試験を施行したKudenchukらは,アミオダロンが生存退院に及ぼす効果(ROC -ALPS試験6))を検証し,2016年『The New England Journal ofMedicine』に結果を発表した.*1 東海大学医学部内科学系循環器内科准教授*2 東海大学医学部内科学系循環器内科教授不整脈治療の最近の動向─ 薬物とデバイスの活用致死性不整脈に対するアミオダロンの有用性網野真理*1・吉岡公一郎*2米国心臓協会(AHA)とヨーロッパ心臓病学会(ESC)では,心肺蘇生(CPR)ガイドライン2015を改訂した.院外心停止例のCPRでは,昇圧剤および電気ショックによる除細動が困難な心室細動(VF)/無脈性心室頻拍(VT)に対する抗不整脈薬としてアミオダロンが推奨されている.しかしその推奨度は低く,根拠となるランダム試験(ARREST試験, ALIVE試験)は10年以上も前に施行されたものである.両試験はともにアミオダロンによる生存入院率が高いことを証明したものであるが,生存退院率と神経学的転帰に関する検討はなされていない.この問題点を解決するために昨年施行されたROC-ALPS試験では,ショック抵抗性のVF/VTを呈する院外心停止例においてアミオダロンとリドカインが生存退院に及ぼす効果を明らかにした.本稿ではROC-ALPS試験と海外reviewおよびわが国のコホート研究を中心にアミオダロンの有用性について概説する.