カレントテラピー 35-3 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.3 7207不整脈治療の最近の動向― 薬物とデバイスの活用―企画国家公務員共済組合連合会立川病院院長三田村秀雄疾病構造の変化や医療の進歩に伴い,不整脈の治療も大きく変わりつつある.なかでも高齢化に伴う心房細動の増加は,単に動悸に悩む人を増やしただけでなく,より深刻な心原性脳塞栓の合併を二次的に増やしている.その結果,患者の健康寿命は短縮し,要介護者が増え,医療費も上昇するなど,社会的影響は少なくない.対する治療としても,高齢者の安全をいかに確保するかという視点から,古くからある抗不整脈治療よりも,最近では抗凝固療法の重要性が強調されている.とりわけワルファリンに替わる新しい抗凝固薬の出現は,心房細動患者の管理に大きなパラダイムシフトをもたらしつつある.その一方で薬を使わない治療,例えば肺静脈隔離を中心とする心房細動のカテーテルアブレーションが急速に普及し,特に発作性心房細動例における洞調律維持率は薬物療法のそれを上回り,症例によってはアブレーションが第一選択となるといった時代に突入しようとしている.また上述の抗凝固療法においても,出血リスクを助長しかねない長期抗凝固薬服用を不要にする,カテーテルを用いた左心耳閉塞術が開発され,期待を集めている.一方,心室性不整脈の治療においても非薬物への流れが加速している.発生源が同定可能な心室性不整脈ではアブレーション治療が有効な治療選択肢となる.院外発生の心室細動からの救命では現場市民によるAEDが頼りにされ,また致死性不整脈の一次予防では植込み型除細動器(implantablecardioverter defibrillator:ICD)が活躍している.しかし,後者ではどのような症例に1台数百万円のデバイスを植え込むのが妥当か,といった費用対効果が課題となっている.残念ながら不整脈の発生そのものを完全に抑えられるような薬はいまだ出現しておらず,その意味で薬物療法が重宝されるのはアブレーションやデバイスで対応困難な一部の例に限定される傾向がある.薬はいかにも手軽な治療手段ではあるものの,実は全身の諸臓器に何らかの影響を及ぼすことが避けられない.加えて薬は定期的な服用が前提となることから,患者本人の自主的協力が欠かせない.加齢とともに臓器機能が低下し,複数の疾患をかかえ,認知症も進みつつあるフレイルな高齢患者に薬物治療を施す際には,これまで以上に慎重な配慮が求められる.「クスリはリスクの裏返し」という意識を捨てずに,デバイスの良さを活かしながら安全で効果的な治療アプローチを追求したいものである.高齢化時代のニーズに応える不整脈治療