カレントテラピー 35-3 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.3 85Key words285リードレスペースメーカ杏林大学医学部第二内科学(循環器内科)教授 副島京子ペースメーカは徐脈に対する確立された治療法で,その発明から60年近くの年月が経った.Single chamberからdual chamberへ,MRIが撮影可能な機種,さらには遠隔モニタリングにより自宅にいながらペースメーカのチェックができるように,と大きな進歩を遂げてきた.本邦では年間約6万人が植え込みを受けている.しかし,本体を植え込む前胸部の皮下ポケットに関連する合併症(血腫,感染,皮膚びらんなど)は5年間で約8%,またリード関連の合併症(リード断線,皮膜損傷,静脈閉塞,三尖弁閉鎖不全など)も5年間で約11%の患者に生じることが知られている.デバイス感染の多くはポケットからの感染で,本体ならびにリードの抜去が必須である.長年留置されているリードは心臓,静脈と癒着があり,その抜去はリスクを伴う.透析患者や静脈の閉塞がある患者では対側への植え込みが必要となり,さらには植え込みルートがない場合も経験される.前胸部のポケットなしに,心内に直接植え込むことのできるリードレスペースメーカは長年切望され,その研究が進められてきた.しかし,長寿命かつ小型化が可能なバッテリーの開発,心臓への固定方法,植え込み方法などの課題が多く,これらがすべて解決されて初めて人に植え込まれたのは2012年であった.現段階では2社のものがあり(本邦ではいずれも未承認),どちらも大腿静脈からデリバリーカテーテルを挿入して右室に留置する.植え込み患者の体の動き,あるいは右室内の血液の温度を感知して患者にふさわしいレートでペーシングを行うことが可能である(rateresponse).現段階ではsingle chamberであるものの,将来的にはdual chamber pacing,さらには左室心内膜にリードレスペースメーカを留置することによる心臓再同期療法も可能となるのではないだろうか.現在行われている冠静脈洞に留置したリードからの心外膜側左室刺激よりも生理的で,有効性も向上する可能性がある.いずれにせよ,心房,右心室,そして左心室のリード間のcommunicationをいかに可能にするかが今後の課題と思われる.また,皮下植込み型除細動器(S -ICD)では頻拍に対してショック作動のみが可能であるが,リードレスペースメーカとの組み合わせが可能となれば,抗頻拍ペーシング,また徐脈に対するペーシングも可能になる.リードレスペースメーカにより新たな時代が到来し,将来のさらなる発展が期待される.