カレントテラピー 35-3 サンプル

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84 Current Therapy 2017 Vol.35 No.3284クライオアブレーション国立病院機構東京医療センター循環器内科 谷本耕司郎1998年にHaissaguerreらが心房細動(atrialfibrillation:AF)メカニズムとして肺静脈起源期外収縮を報告し,その後の肺静脈隔離法・3次元マッピング装置やカテーテルアブレーション機器の進歩もあり,発作性AFに対する肺静脈電気的隔離術は確立した治療となっている.2014年から日本でも肺静脈隔離術にバルーン型アブレーションカテーテルを用いたクライオアブレーションが使用可能となり,発作性AFに対するアブレーション法として大きな割合を占めるようになってきている.クライオバルーンアブレーション(ArcticFront Advance,メドトロニック社製)は,カテーテル先端に直径28 mmのバルーンが付いたアブレーションカテーテルを肺静脈開口部に圧着し,造影剤を用いて肺静脈がバルーンにより完全閉塞されていることを確認する.その後,バルーン内で亜酸化窒素ガスを噴射することによりバルーン温度を約-50度まで冷却し,バルーンに接触する肺静脈開口部を冷却(クライオ)アブレーションするシステムである.肺静脈が完全閉塞されていれば,多くの場合,冷却開始より60秒以内に肺静脈が電気的隔離され,180 秒間のクライオアブレーションにより永続的な電気的隔離が確立する.このクライオアブレーションを4本の肺静脈すべてに行い,肺静脈隔離術が完成する.これは従来の高周波カテーテルアブレーションが,片側上下肺静脈周囲に1回30秒の通電を20~30回程度も行っていたのに対して,手技時間の大幅な短縮(約2時間)に貢献している.また,クライオアブレーションされた領域は連続的かつ幅をもっており,高周波アブレーションに比べ,慢性期の肺静脈の伝導再開率も低いと報告されている.さらには,従来の高周波アブレーションが熟練したカテーテル操作を必要とするのに比べ,クライオアブレーションでは肺静脈閉塞するためのバルーンカテーテルの操作が容易なため,手技のラーニングカーブも早いと報告されている.2016年に報告されたFIRE AND ICE試験は薬剤抵抗性発作性AF患者762人を対象とする大規模多施設前向きランダム化比較試験であり,平均1.5年のフォローアップ期間後にクライオバルーンアブレーションは高周波アブレーションと比較して同等の有効性・安全性であると結論された(1年後再発率:クライオ群34.6% vs. 高周波群35. 9%).このように高い有効性をもつクライオアブレーションは発作性AFに対するアブレーション法として広く使用されているが,高周波アブレーションに比べ,横隔神経麻痺の合併症(1~5%),長いX線透視時間(約20 分),造影剤使用などの課題もあり,持続性AFに対する応用などを含めて今後の更なる発展が期待される.不整脈治療の最近の動向─ 薬物とデバイスの活用