カレントテラピー 35-3 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.3 71治療薬解説271バンの使用は消化管出血を増加させていた.機序の1つ目として,ワルファリンはほぼ100%近く消化管で吸収されて効力を発揮するのに対して,DOACは消化管内に未吸収の薬剤が残り,局所における薬剤活性化の関与が指摘されている11).特に消化管内に残ったダビガトランは消化管内の細菌叢に存在するエステラーゼにより活性化されることによって消化管出血を起こしている可能性が指摘されており,ダビガトランによる出血が上部消化管より下部消化管で多い理由であるという報告もある12).機序の2つ目は,DOACの用法・用量によるもので,1日2回投与よりも1日1回投与のほうが,消化管内でのDOAC濃度のピークが高くなることが可能性として考えられている.このことは,1日1回投与のエドキサバンやリバーロキサバンで消化管出血が多いことを説明しているのかもしれない13).機序の3つ目は,高齢になるほど無症候性に消化管粘膜病変を有している可能性が高いことである.ENGAGE試験やROCKET AF試験は,RE -LY試験やARISTOTLE試験と比較してCHADS2スコアが高く,やや年齢の高い患者を対象としており,実際,アピキサバンでは大出血の25%が消化管出血であったが,リバーロキサバンでは大出血の40%が消化管出血であった13).アジア人におけるデータは後述するが,DOAC服用中に消化管出血を発症した場合は,個々の症例に応じて上記の機序を検討してみてもよいであろう.Ⅴ DOACのアジア人・低用量・高齢者に関するエビデンスアジア人は非アジア人と比較して重篤な出血リスクが高いことから,DOACの有効性,安全性に関するエビデンスも当然変わってくる可能性がある.RE -LY(ダビガトラン),ROCKET AF(リバーロキサバン),J-ROCKET AF(リバーロキサバン),ARISTOTLE(アピキサバン),ENGAGE AF -TIMI48(エドキサバン)の5試験に関するメタアナリシスでは,脳卒中または全身性塞栓症について,ワルファリンと比較した通常用量DOACによるリスク抑制は,非アジア人(オッズ比0.85,95%信頼区間0.77~0.93,p<0.001)と比較してアジア人(オッズ比0.65,95%信頼区間0.52~0.83,p<0.001)で大きく,大出血,頭蓋内出血に関しても,非アジア人と比較してアジア人でより安全であった.しかしながら,低用量DOAC(ダビガトラン110mg,エドキサバン30mg,リバーロキサバン15mg)では有効性と安全性に関してアジア人,非アジア人で差異はなかった.消化管出血については,ダビガトラン150mg,リバーロキサバン20mg,エドキサバン60 mgでいずれも非アジア人ではワルファリンに比べて高率であったが,アジア人ではその傾向はみられず,この点からもDOACはアジア人により適していると考えられる14).75歳以上の高齢者におけるDOACは少なくとも有効ダビガトランリバーロキサバンアピキサバンエドキサバン150mg1日2回110mg1日2回20mg1日1回5mg1日2回60mg1日1回30mg1日1回脳卒中および全身塞栓症OR 0.660.49~0.90p=0.009OR 0.880.66~1.18p=n.s.OR 0.800.63~1.02p=n.s.OR 0.700.52~0.93p=0.01OR 0.810.65~1.03p=n.s.OR 1.120.90~1.39p=n.s.大出血OR 1.180.97~1.44p=0.10OR 1.030.83~1.27p=n.s.OR 1.040.86~1.26p=n.s.OR 0.630.51~0.77p<0.0001OR 0.810.67~0.98p=0.03OR 0.460.38~0.57p<0.0001消化管出血OR 1.781.35~2.35p<0.0001OR 1.401.04~1.90p=0.03n/a n/a n/a n/a脳内出血OR 0.430.26~0.72p=0.001OR 0.360.22~0.61p=0.0001OR 0.770.48~1.23p=n.s.OR 0.380.24~0.59p<0.0001n/a n/a表475歳以上の高齢者における非弁膜症性心房細動に対する各DOACとワルファリンとの臨床成績比較〔参考文献15)より作成〕