カレントテラピー 35-3 サンプル

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68 Current Therapy 2017 Vol.35 No.3268Ⅰ DOACの適応直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulants:DOAC)は非弁膜症性心房細動(atrial fibrillation:AF)が対象であり,僧帽弁狭窄症あるいは人工弁(生体弁,機械弁)の症例に対する適応はない.僧帽弁閉鎖不全症など,その他の弁膜症に合併する心房細動は,非弁膜症性心房細動として扱う.機械弁置換術後患者を対象としたダビガトランとワルファリンとの比較試験(RE -ALIGN)では,非弁膜症性心房細動の臨床試験よりも高用量のダビガトランが用いられたが,血栓塞栓症,出血合併症の両方が増加した.これによって,米国食品医薬品局(FDA)ではダビガトランの機械弁置換術後患者に対する使用禁止の記載が追加された1).一方,生体弁については議論のあるところである.日本循環器学会『心房細動(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)』では生体弁についてもワルファリンのみ適応としているが,最近,心房細動を伴わない生体弁置換術後患者においてワルファリンの有用性を否定したメタ解析が報告されている2).したがって,心房細動を伴う生体弁置換術後患者においては必ずしもワルファリンのみ適応とする根拠がない.今後ガイドラインの改訂に際しても考慮すべきポイントであろう.Ⅱ DOACとワルファリンとの比較ワルファリンは従来から心房細動患者の脳血栓塞栓症予防目的で用いられている.ワルファリンではCHADS2スコア2点以上では明らかな有益性を示すが,0~1点では出血合併症が多くなるために優位性がなくなる3).特にアジア人において,頭蓋内出血のリスクが白人の4倍と高いことは問題である4).それに対してDOACは,CHADS2スコアが1点でも臨床直接作用型経口抗凝固薬安部晴彦*1・是恒之宏*2*1 国立病院機構大阪医療センター臨床研究センター*2 国立病院機構大阪医療センター院長不整脈治療の最近の動向─ 薬物とデバイスの活用心房細動(atrial fibrillation:AF)患者の脳血栓塞栓症予防を目的として,ワルファリンが長く用いられてきたが,直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulants:DOAC)であるダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバン,エドキサバンの4種類が非弁膜症性心房細動に対して使用されるようになった.DOACはワルファリンと比較して腎機能による使用制限はあるものの,食事制限および血液凝固モニタリングが不要で,薬物間相互作用が比較的少なく,脳出血の副作用も少ない.一方で,ワルファリンと異なって怠薬により速やかに効果を失うため,服薬コンプライアンスは重要である.本稿ではDOAC における消化管出血の問題,アジア人・低用量・高齢者におけるエビデンス,抗血小板薬との併用の問題,除細動に対するエビデンスについても言及する.a b s t r a c t