カレントテラピー 35-3 サンプル

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46 Current Therapy 2017 Vol.35 No.3246法である1)~5).以前は③リズムコントロール療法と②レートコントロール療法は同列で考慮すべき治療法とされていたが,最近のガイドラインでは②を優先する内容となっている(図1)5).③リズムコントロール療法を行うケースが減ってきている理由は,リズムコントロール療法では抗不整脈薬を用いるが,個々の薬剤の作用機転を理解していないと使いこなせないといったような使用上のハードルが高く,レートコントロール薬に比べて,抗不整脈薬は副作用の発現率が高いといったことも影響している6).しかし,自覚症状が強く,生活の質(QOL)の低下を招いている患者においては,現在もなお③リズムコントロール療法を選択することは多い.Ⅲ 抗不整脈薬の分類と作用機転古くから使用されているVaughan Williams分類では,心筋細胞の活動電位に及ぼす作用によって抗不整脈薬をⅠ群薬,Ⅱ群薬,Ⅲ群薬,Ⅳ群薬の4つに分けている.Ⅰ群はさらに活動電位持続時間(actionpotential duration:APD)によってⅠA群(APD延長),ⅠB群(APD短縮),ⅠC群(APD不変)の3つに細分化される.近年,学会が推奨してきたSicilianGambit分類では,チャネルや受容体に対する作用によって,Naチャネル遮断薬,Kチャネル遮断薬,Caチャネル遮断薬やβ遮断薬などのように分けている6).Naチャネル遮断薬はⅠ群薬,Kチャネル遮断薬はⅢ群薬,β遮断薬はⅡ群薬,(非ジヒドロピリジン系)Caチャネル遮断薬はⅣ群薬にほぼ相当する.VaughanWilliams分類とSicilian Gambit分類の両者を考慮に入れて作成した,独自の抗不整脈薬の分類のしかたを表1に示す7).Naチャネル遮断薬は,リエントリーをメカニズムとする心房細動に有効で,主な作用機転はリエントリー性興奮波に対しての伝導の抑制と興奮間隙の開大である.Kチャネル遮断薬は,リエントリーをメカニズムとする心房細動に有効で,主な作用機転はリエントリー性興奮波に対しての不応期の延長である.β遮断薬は,交感神経緊張に起因する心房細動に対して抑制効果がある.Caチャネル遮断薬は,トリガードアクティビティをメカニズムとする心房細動に対して抑制効果がある.Naチャネル遮断薬とKチャネル遮断薬のメカニズムと作用機転については,理解が難しいので図2でシェーマを用いてわかりやすく解説する.Ⅳ Pill-in-the-pocketのノウハウ発作回数の少ない心房細動においては,近年,発作があった時点で1日量の経口薬を一度に服用する“pill -in -the -pocket”アプローチが選択されることがある(図3)7).カテーテルアブレーションを希望せず,また薬物を定期的に服用することができない患者においては,とても利便性が高い治療法といえる.Pill-in-the-pocketは,リズムコントロール療法に使用される経口抗不整脈薬を頓服で用いる治療法と考えてよい.抗不整脈薬の1日使用量を一度に服用すると,通常の投与法よりも心房細動の停止効果が高く,逆に継続的な投与法よりも副作用が少ないことが示されている8).その理由は,抗不整脈薬の副作用は,薬物濃度が有効血中濃度の上限を超えて長期にわたって高値を維持するために生じるが,この治療法では通常ファーストラインセカンドライン(必要あれば)心房細動の検出抗血栓凝固療法レートコントロール(心拍数調節)療法リズムコントロール(洞調律維持)療法アップストリーム療法図1 日欧米のガイドラインに準じた近年の心房細動に対する薬物治療の方針レートコントロール療法のほうがリズムコントロール療法より優先順位がやや高くなっている.