カレントテラピー 35-3 サンプル page 13/30
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カレントテラピー 35-3 サンプル
Current Therapy 2017 Vol.35 No.3 45245Ⅰ はじめに現在の心房細動治療は,薬物治療に加えてカテーテルアブレーションによる治療も可能であり,個々の患者において“benefit”,“risk”,“cost”を考慮して,総合的な判断により治療法を選択する時代となっている.若年者で発作性の心房細動であり,症状が強ければ,近年ではカテーテルアブレーションが選択されるケースが増えてきている.しかし,高齢者などで非侵襲的な治療法を希望しない患者においては,薬物を用いたリズムコントロール(洞調律維持)療法で対応するしかない.いずれの治療法を選択しても,抗血栓凝固療法による脳塞栓症予防の必要性をまずは吟味する必要がある.本稿では,上記の心房細動治療に対する考え方を踏まえたうえで,薬物治療におけるリズムコントロール療法の意義とpill-in-the-pocket(頓服療法)による心房細動停止について概説する.Ⅱ リズムコントロール療法の位置づけ心房細動に対する薬物治療には,①血栓塞栓症の予防を目的とした抗血栓凝固療法,②患者の自覚症状とQOLの改善を目的としたレートコントロール(心拍数調節)療法,③心房細動それ自体の抑制を目的としたリズムコントロール療法,④心房細動の基質を改善させるアップストリーム療法の4つの方法がある1)~3).④アップストリーム療法はあくまでも補助的な治療法にすぎない.言うまでもなく,心房細動に対するファーストライン治療は,①抗血栓凝固療* 東邦大学大学院医学研究科循環器内科学教授不整脈治療の最近の動向─ 薬物とデバイスの活用Pill-in-the-pocketによる心房細動の停止池田隆徳*心房細動における薬物治療としてpill-in-the-pocket が行われることがある.経口抗不整脈薬を用いたリズムコントロール療法のひとつの手法である.発作回数が少なく,症状が強い孤立性の心房細動患者が対象となる.通常の投与法とは異なり,発作があった時点で1 日量の抗不整脈薬を一度に頓服し,心房細動を停止させるアプローチ法である.カテーテルアブレーションを希望せず,薬物を定期的に服用することができない患者においては利便性が高い.使用されるのは,主に作用の強いNaチャネル遮断薬(ⅠC またはⅠA 群薬に相当)であるが,心房細動の発現に交感神経の関与が高い場合はβ遮断薬が選択されることも多い.停止効果が高く,継続的な投与法よりも副作用が少ない.Pill-in-the-pocket ではその効果を高めるため,抗不整脈薬の作用機転を知っておいたほうがよい.また,思いがけない副作用を回避するため,薬剤の排泄経路の起こり得る副作用について理解しておくことを勧める.