カレントテラピー 35-2 サンプル page 7/32
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カレントテラピー 35-2 サンプル
10 Current Therapy 2017 Vol.35 No.2108御に関しては,前者ではT細胞受容体(T cell receptor:TCR)を介した抗原刺激とCD28を介した共刺激により転写因子NFATc1が,後者では炎症性サイトカイン(IFN -α)の刺激によりIRF9が,PD -1遺伝子のプロモーター領域に結合してPD-1の転写活性を促進することが報告されている1).2000年および2001年にPD -L1(B7-H1, CD274)およびPD-L2(B7-DC, CD273)がPD-1のリガンドとして同定され,PD -1による免疫抑制の分子メカニズムが明らかとなった11),14).PD -1の細胞質領域にはimmunoreceptor tyrosine -based switch motif(ITSM)が存在する.PD-1に生理的リガンド(PD-L1およびPD-L2)が結合するとITSMがリン酸化され,脱リン酸化酵素SHP 2が会合する(図1).SHP 2はTCRシグナルの重要なアダプター分子であるZAP70を脱リン酸化することによって不活性化し,T細胞の活性化を抑制する1).その結果,PD-1シグナルはT細胞の増殖やIFN -γなどのサイトカイン産生,細胞傷害活性を抑制する.Ⅴ PD-1とPD-L1, PD-L2の発現の違い生体内でPD -1は活性化したT細胞に限局的に発現している.PD -1はナイーブなT細胞には発現がみられず,抗原刺激により活性化T細胞上に発現が誘導される.特に炎症部位の末梢組織に浸潤したエフェクターT細胞には強い発現がみられる.PD-1とは対照的に,PD-L1はさまざまな細胞,組織で広く発現する(図2).PD -L1は正常末梢組織で恒常的な発現がみられ,さまざまな臓器の抗原提示細胞や血管内皮細胞に発現し,炎症により発現が上T細胞活性化・細胞増殖・エフェクター機能・生存T細胞不活性化・細胞増殖の抑制・エフェクター機能の抑制SHP2TCR CD3 CD28 IFNARZAP70pPLCγpJAK1 TYK2AKTPI3KSignal 1 Signal 2 Signal 3AP1 NFAT NFκB STAT1 STAT2NFATPD-1STAT1 STAT2IRF9核抗原刺激共刺激炎症性サイトカイン抑制T細胞受容体IRF9細胞質PD-1図1 PD- 1 を介したシグナル伝達PD- 1は脱リン酸化酵素SHP 2を介してT 細胞受容体(T cell receptor:TCR)を介した活性化シグナルを抑制する.T 細胞はシグナル1(抗原刺激),シグナル2(共刺激),シグナル3(炎症性サイトカイン)によって活性化する.ナイーブなT 細胞では,TCR シグナルを介したカルシウムの流入によって転写因子NFATc 1 が活性化されPD - 1 の転写活性を促進する.一方,慢性的に活性化された(“疲弊した”)T細胞では,IFN - αにより転写因子IRF 9 がPD - 1 遺伝子のプロモーター領域に結合してPD - 1 の転写活性を慢性的に促進し,膜表面にPD - 1 が発現する.PD - 1 に生理的なリガンド(PD -L 1 およびPD -L 2)が結合すると,SHP 2 がリクルートされ,TCR シグナルの主要なアダプター分子であるZAP 70 を脱リン酸化することによって不活性化し,T細胞の増殖とエフェクター機能を抑制する.