カレントテラピー 35-2 サンプル

カレントテラピー 35-2 サンプル page 28/32

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82 Current Therapy 2017 Vol.35 No.2180T細胞共刺激分子 T-cell co-signal molecules(co-stimulation/co-inhibition)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子免疫学分野教授 東 みゆき抗原特異的なT細胞の活性化には,MHC/peptideのT細胞抗原受容体(T-cell antigenreceptor:TCR)への結合による第1シグナルに加えて,T細胞と抗原提示細胞(antigen -presenting cell:APC)上に発現する膜表面分子結合を介しての第2シグナルが不可欠であるというT細胞活性化の2シグナルモデルが1980年代に提唱され,具体的な第2シグナル経路としてCD28-CD80経路による共刺激(co -stimulation)が初めて明らかにされた.現在では,第2シグナルには活性化と抑制性シグナルが存在することから,共刺激は活性化と抑制性の両シグナル経路を含めてco -signalと呼び,活性化共刺激をco-stimulation,抑制性共刺激をco-inhibitionと区別するようになっている.共刺激はTCRシグナルを増幅あるいは減弱させることで,抗原特異的なT細胞応答のon/offスイッチの切り替えと,アクセル(co-stimulation)とブレーキ(co-inhibition)による応答強度の調節をしている.共刺激分子群の多くは,CD 28-B 7ファミリーあるいはTNF-TNF受容体ファミリーに属する.CD28-B7ファミリーはIgスーパーファミリーに属するⅠ型膜貫通タンパク分子群で,CD28/CD152(CTLA- 4)-CD80/CD86, CD279(PD- 1):CD274(PD -L1)/CD273(PD -L2),CD278(ICOS):CD 275(ICOSL)などが存在する(下線は抑制性受容体,受容体:リガンドの順に記載).B7分子の多くは,樹状細胞やマクロファージなどのAPC上に発現誘導されるが,炎症下の上皮細胞や内皮細胞などの組織細胞,さらにはがん細胞に発現誘導が認められるものもある.抑制性共刺激受容体であるCTLA - 4やPD - 1 などは免疫チェックポイント分子と呼ばれ,自己応答性の制御と慢性化による組織障害防止に重要な働きをしているが,抗CTLA - 4や抗PD - 1阻害抗体は,免疫チェックポイント阻害剤としてがん免疫療法に使用されている.活性化共刺激阻害は免疫抑制剤として利用可能であるが,CTLA - 4の細胞外領域とヒト免疫グロブリンFc部を融合させたキメラ蛋白CTLA - 4Igは,アバタセプトとして関節リウマチに,CTLA - 4の細胞外領域の2アミノ酸を置換した変異CTLA - 4Igであるbelataceptは腎移植で,CD28シグナル阻害剤として臨床応用されている.がん免疫療法の最新動向─ 免疫チェックポイント阻害剤の将来展望