カレントテラピー 35-2 サンプル

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76 Current Therapy 2017 Vol.35 No.2174特異的にCTLA- 4を欠損させたマウスは,Tregの免疫抑制能を失い,自己免疫疾患を発症するとともに強い抗腫瘍免疫応答を示す2).またヒトにおいても,TregはCTLA - 4によりAPC上のCD80/CD86の発現を低下させ抗原提示能を制御することにより,自己抗原特異的CD8+T細胞の活性化を抑制し,これらのT細胞を不応答状態に陥らせることが明らかになっている3).このようなTregのCTLA- 4を介した免疫抑制は,がん局所での免疫逃避機構のひとつであり,抗CTLA - 4抗体を介してこれらの抑制を解除することが可能と考えられる.また,抗CTLA- 4抗体の抗体依存性細胞傷害(antibody-dependent cellularcytotoxicity:ADCC)活性によって直接Tregを除去することでの抗腫瘍効果が得られる可能性も指摘されている.特にマウスモデルの解析では,Fc除去CTLA - 4 抗体では抗腫瘍活性が認められなくなることが示され,Fc受容体に依存した抗CTLA - 4抗体によるTregの除去が抗腫瘍免疫に重要であることが明らかになっている4),5).Fc受容体は免疫グロブリンのアイソタイプのなかでIgG1との親和性が強く,イピリムマブはIgG1アイソタイプであることからADCC活性が期待できる.ヒトにおいて抗CTLA - 4抗体の抗腫瘍活性にTregがどの程度関与しているかは今後の検討課題である.免疫チェックポイント阻害剤は,従来の殺細胞性抗腫瘍製剤とは異なった特有の有害事象(immune relatedadverse event:irAE)が生じ得る.抗CTLA- 4抗体のirAEは約60~65%と,後述の抗PD- 1抗体が約40%程度であるのに対しやや高いことが報告されている6).マウスを用いた研究結果から,CTLA- 4とPD -1の作用機序の違いが報告されており,CTLA - 4欠損マウスでは生後急速に全身性リンパ増殖性疾患を発症し重症の心筋炎や膵炎によって2~3週間以内に全例が死亡するのに対し,PD - 1 欠損マウスでは6カ月齢前後から自己免疫様の全身性血管炎や腎炎を発症するものの,全体の1/3程度は死亡せずに生存し続ける7),8).CTLA - 4による免疫抑制は比較的強力であり,irEAの発症率もこのようなCTLA - 4のもつ-- --+リンパ節がん微小環境T cellT cell Cancer cellAPCTCRTCR MHC-抗原MHC-抗原CD80/CD86CD80/CD86CD28CTLA-4Anti-CTLA-4 AbPD-1PD-L1Anti-PD-1 AbAnti-PD-L1 Ab抑制シグナル抑制シグナルPD-L2PD-1抑制シグナルPD-L1/2Anti-PD-1 Ab図2 がん免疫療法におけるCTLA-4シグナルとPD-1シグナルの阻害リンパ節において,T細胞はAPC上のMHCを介して,抗原提示を受ける.T細胞の活性化にはTCRシグナルのみでは不十分であり,副刺激が必要である.CD80 /CD86-CD28シグナルは主要な活性化副刺激であるが,CTLA- 4はCD28と競合阻害することでT細胞の活性化を抑制する.抗CTLA- 4抗体はこの過程をブロックすることで,T細胞を再活性化している.抗PD- 1抗体,抗PD-L1抗体はPD- 1-PD-L1相互作用を阻害することで腫瘍細胞に対するT細胞応答を高めている.(プライミング相)がん局所においては,がん細胞とT細胞のPD - 1-PD -L1経路を阻害している.(エフェクター相)APC:抗原提示細胞,MHC:主要組織適合抗原複合体,TCR:T細胞受容体.