カレントテラピー 35-2 サンプル page 20/32
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カレントテラピー 35-2 サンプル
74 Current Therapy 2017 Vol.35 No.2172Ⅰ 免疫チェックポイント阻害剤T細胞の活性化には,T細胞受容体(T cell receptor:TCR)シグナルを介した抗原刺激(主刺激)の他に共刺激分子を介した副刺激(補助刺激)が必要である.副刺激は,T細胞上のCD28と抗原提示細胞(antigen presenting cell:APC)上のCD80(B7- 1)/CD86(B7- 2)を介した刺激がとりわけ重要である.他にも多くの免疫応答を正,負の双方に調節する共刺激および共抑制分子が存在し,T細胞活性化を中心に免疫応答を制御している(図1).このうちT細胞応答を抑制する機能をもった共抑制分子を特に免疫チェックポイント分子と呼んでいる.免疫系は,ウイルス等の異物(外来抗原)が宿主に侵入すると免疫応答を惹起し,異物を排除する.同時に免疫系は過剰もしくは不適切な免疫反応を抑制する機構も有している.例えば,末梢血中には胸腺での負の選択を逃れた自己抗原に反応するT細胞が存在するが,これらの自己反応性T細胞は自己の組織に対して免疫反応を引き起こさないよう,末梢にも免疫抑制機構が存在する.その一つが免疫チェックポイント分子による抑制機構である.それらは末梢性免疫寛容(peripheral tolerance)機構として,胸腺における中枢性免疫寛容(central tolerance)とともに宿主の生体恒常性を維持するうえで重要な機構である.リガンドと結合した免疫チェックポイント分子は,細胞内へ抑制性の刺激を伝達することで細胞増殖やエフェクター機能を抑制する.がん微小環境においては,がん細胞および間質に浸潤する細胞が免疫チェックポイント分子に対するリガンドを発現し,浸潤してきた抗CTLA-4抗体,抗PD-1抗体,抗PD-L1抗体,抗CCR4抗体藤岡優樹*1・西川博嘉*2*1 国立がん研究センター先端医療開発センター免疫TR分野*2 国立がん研究センター先端医療開発センター免疫TR分野分野長がん免疫療法の最新動向─ 免疫チェックポイント阻害剤の将来展望近年,がんの新たな治療法としてがん免疫療法が脚光をあびている.本邦でも抗CTLA- 4抗体,抗PD- 1抗体が臨床応用され,“免疫系の働きによりがんを排除する”という概念が臨床現場にも浸透してきている.これらの免疫チェックポイント分子は,免疫応答を負に制御することで生体の恒常性を維持している分子であるが,これらの分子の働きを阻害する(免疫チェックポイント阻害剤)ことでがんに対する免疫応答を再活性化させ,治療効果を得ることが試みられている.本稿では,すでに承認されている抗CTLA- 4抗体と抗PD- 1 抗体に加え,PD- 1 リガンドを標的とした抗PD-L 1抗体について,それぞれの免疫学的特徴について概説する.一方で,これまで直接的な抗腫瘍作用を中心に考えられてきた抗腫瘍製剤が,免疫の働きによってもがんを制御している可能性も示唆され始めている.新たに免疫的な作用機序の解析が進められている薬剤として,ここでは抗CCR 4抗体について述べる.a b s t r a c t