カレントテラピー 35-2 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.2 47免疫チェックポイント阻害療法の基礎と臨床145ボルマブ(完全ヒト型IgG4抗PD -1抗体)を用いた第Ⅰ相試験が行われた7).このニボルマブ開発の黎明期に,日本でも臨床応用を目指した医師主導治験を前提として,2006年から当科と本庶教授および免疫細胞生物学(湊長博教授)との共同研究が始まった.翌2007年に卵巣がんにおいてPD -L1,PD -L 2発現が患者予後を規定する重要な因子であることを解明した8),9).そこで卵巣がんに対してPD -1経路阻害薬が有望であると考え,2011年から当科にて,プラチナ抵抗性再発・進行卵巣がんに対するニボルマブを用いた免疫療法に関する第Ⅱ相医師主導治験を1mg/kgと10mg/kg(後に3mg/kgに変更)の2用量コホートで開始した.その結果,完全奏効(complete response:CR)2例,PR 1例,SD 6例,PD 10例,評価不能(notevaluable:NE)1例で,奏効率15%,疾患制御率45%であった(表1)10).特にCRの2例はともに3mg/kg群であり,いずれも1年間の治験薬投与が終了しているが,無治療にて2年以上無再発生存しており長期の治療効果を認めている(図2),(図3)11).生存解析ではOS中央値は20.0カ月とプラチナ抵抗性卵巣がんに対する治療としては良好な治療成績となった.なお重篤な有害事象は2例に認め,いずれも発熱から発症したが,1例はさらに静脈血栓症を,もう一例は歩行障害,および見当識障害を併発したためステロイドパルス,血漿交換,血液透析を要した10).以上より,プラチナ抵抗性再発卵巣がんに対するニボルマブの有効性と安全性が示されたことから,ニボルマブの適用拡大を目指して2015年よりプラチナ抵抗性卵巣がん116例を対象に,ニボルマブと2次化学療法(リポソーマルドキソルビシンもしくはゲムシタビン)とを比較する国内多施設,ランダム化第Ⅱ相試験へと展開している(NINJA試験:JapicCTI -153004)(表2).また,当科では医師主導治験の検体を用いて,ニボルマブ治療の患者選択,有効性・安全性および早期効果判定に関わるバイオマーカー探索を行っており,卵巣がんの組織型やB細胞系免疫応答変化とニボルマブにおける治療効果との関連などの新たな知見を得ている12).また現在,本医師治験報告がマイルストーンとなって,ニボルマブ以外の他のPD -1経路阻害薬の開発競争も活発化している(表1).さらに,米国では抗CTLA - 4抗体など他の免疫療法や分子標的薬との併用療法などの治験(臨床試験)が登録されている(表2).またもう一つの抗PD -1抗体のペンブロリズマブ(ヒト化抗PD - 1 IgG 4-kappa 型抗体)は,2015 年の米国臨床腫瘍学会(ASCO2015)において腫瘍のPD-L1発現陽性の固形腫瘍を対象とした第Ⅰb相試験(KEYNOTE-028)の卵巣がんコホート49例にて,CR1例(3.8%),PR 2例(7.7%),SD 6 例(23.1%)で奏効率は11.5%,DCRは34.6%と報告された(表1)13).安全性についてはGrade 3以上の有害事象は膵炎1例(3.8%)を認めた.現在,再発例に対する2次化学療表1 卵巣がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の治療効果標的抗体名IgGサブクラス製薬企業卵巣がんに対する奏効率PD- 1ニボルマブ(OpdivoR, BMS- 936558 , MDX 1106)Human IgG 4 Bristol-Meyers Squibb/Ono20%(3mg/kg:CR 2例/計10例)10%(1mg/kg:PR 1例/計10例)ペンブロリズマブ(KeytrudaRMK- 3475 , lambrolizumab)Humanized IgG 4 Merck11 . 5%(CR 1例 PR 2例/計26 例)PD-L 1BMS- 936559(MDX 1105) Human IgG 4 Bristol-Meyers Squibb5 . 9%(PR 1例/計17 例)atezolizumab(TECENTRIQR, MPDL 3280 A)Human IgG 1 k Roche20%(PR 2 / 10 例)avelumab(MSB 0010718 C) Human IgG 1 Merck Serono/Pfizer9 . 7%(PR 12 例/計124例)durvalumab(MEDI 4736) Humanized IgG 1 k MedImmune/AstraZenecaolaparibとの併用で20%(PR 2例/計10 例)〔参考文献10),11),13)~15)より引用改変〕