カレントテラピー 35-2 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.2 45143Ⅰ はじめに一般に,進行卵巣がんに対する標準治療は,タキサン系およびプラチナ系抗がん剤の併用療法と腫瘍減量手術を組み合わせた集学的治療でありいったん完解することが多いが,その後の再発率60%以上と非常に高く,2次化学療法の治療効果が低いため婦人科がんのなかでは最も予後不良である.そのため標準治療に代わる,あるいは補完する新たな治療開発が求められている.卵巣がんは,卵巣表層上皮に発生する上皮性がんが90%以上を占めており,それらは主に漿液性がん(60~70%),明細胞がん(20~25%),類内膜がん(10~20%),粘液性がん(数%)と主に4つの病理組織型に分類され,それぞれの遺伝子変異を背景とした生物学的特性を有していることから,個々の組織や遺伝子背景に基づく新たな個別化治療が求められている1).これまでに,卵巣がんに対して,経口ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害薬,血管新生阻害薬(キナーゼ阻害薬含む),哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)阻害薬などの分子標的薬の臨床試験も進んでいるが,本邦で保険収載されているものは卵巣がんに対するベバシズマブのみで,治療効果も限定的である.一方で近年,先行した卵巣がんを中心に免疫チェックポイント阻害薬CTLA(cytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4)阻害薬(抗CTLA - 4抗体)やPD -1(Programmedcell death-1)経路阻害薬(抗PD-1抗体,抗PD-L1抗体)の治験も数多く開始されている(図1).また患者検体を用いて,ゲノムワイドに治療効果予測のバイオマーカーを探索する研究も盛んに行われており,卵巣がんにおけるBRCA 変異遺伝子やDNAミスマッチ修復遺伝子変異などが注目されはじめている.本稿では,卵巣がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の臨床への展開のup-to-dateと,今後の課題と展望について概説する.*1 京都大学医学部附属病院周産母子診療部講師*2 近畿大学医学部産科婦人科学教室教授*3 京都医療センター院長・産婦人科がん免疫療法の最新動向─ 免疫チェックポイント阻害剤の将来展望婦人科がん(卵巣がん)に対する免疫チェックポイント阻害薬療法濵西潤三*1・万代昌紀*2・小西郁生*3卵巣がんは,すでに腹腔内に進展した状態(腹膜播種)で見つかることが多く,さらに2 次化学療法の治療効果が低いため婦人科がんでは最も予後不良であり,新規治療開発が求められている.近年注目されている免疫チェックポイント阻害薬(抗CTLA- 4抗体,抗PD- 1抗体,抗PD-L 1抗体)は,卵巣がんに対しても新しい治療薬の候補としても期待されはじめており,現在8種類の阻害薬により,単剤・多剤併用を合わせて30 種類以上の臨床試験(治験)が国内外で登録されている.そこで本稿では,当科の医師主導治験を含む卵巣がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の開発状況と今後の展望と課題について概説する.