カレントテラピー 35-12 サンプル

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12 Current Therapy 2017 Vol.35 No.121118dysarthriaも頻度が高い.Ⅳ TIAと軽症脳梗塞の治療と予後1 経過と予後最終的な診断がTIAとなるか軽症脳梗塞となるかはともかく,虚血性脳卒中の超急性期には血栓溶解療法(発症後4.5時間以内)および血管内血腫除去療法(主として発症後6時間以内)の適応をまず考慮すべきである(詳細は本誌他項を参照).自然に神経症状が軽快しTIAもしくは軽症脳梗塞と診断された症例で,発症後一般開業医(GP)で診療し,後日予約制の専門施設を受診させた場合と,最初から専門施設に入院させて診療した場合とで,予後を比較した試験がEXPRESS試験である9).その結果,脳梗塞の再発率は専門施設では一般開業医の20%と圧倒的に低かった(図3).専門施設での違いは,早期の検査,抗血小板薬やスタチンなどの早期の治療開始などに認められた.このことから,TIAと診断したら専門施設での適切・迅速な病態把握,それに応じた治療が再発を抑え,予後を改善するうえで重要である.2 非心原性脳梗塞・TIAの治療アテローム血栓症急性期は血小板血栓を再発しやすいため,強力な抗血小板薬による治療が求められる.しかし抗血小板薬の併用療法(dual antiplatelettherapy:DAPT)は脳梗塞予防効果よりも脳出血合併のリスクが高まるため,慢性期においては『脳卒中治療ガイドライン2015』でも推奨されていない.これに対して,TCDを用いて非心原性脳梗塞・TIAの急性期におけるDAPTの微小塞栓抑制効果をみたのがCARESS試験5)とCLAIR試験6)であり,DAPTによりアスピリン単剤よりも発症7日までの微小塞栓および虚血イベントの再発が有意に抑制された.さらに大規模試験にてDAPTの再発予防効果をみたのがCHANCE試験である10).DAPT群ではクロピドグレルのローディング後に維持量を投与し,同時にアスピリンを併用,21日後にクロピドグレル単剤に変更した.単剤群では最初からアスピリンのみを単剤で使用した.結果,DAPT群で優位に再発は抑制され,かつ脳出血の合併症も増加しなかった(図4).この結果を受けて,アテローム血栓症を背景としたTIA,非心原性脳梗塞の急性期治療にDAPTが推奨されている(ガイドライン2017).しかも併用期間は3週間程度としてその後は単剤にすることが推奨されている.一方で脳出血既往者,高齢者,アルコール多飲者,MRIにて微小出血が多発している症例などでは脳出血のリスクが高いため,急性期からDAPTではなく経口抗血小板薬単剤での加療開始を考慮すべきである.14 Phase 112 Phase 21086420p<0.0001Risk of recurrence(%)図3 TIA または軽症脳梗塞発症後の対応施設と予後Phase 1 は一般開業医で診療し,後日専門施設に紹介した症例群.Phase 2 はすぐに専門施設で診療した症例群.再発率は圧倒的に専門施設で診療した方が低い.〔参考文献9)より引用〕1.00.80.60.40.20.00 30 60 908.59.09.510.00 30 60 90Days since Randomizationクロピドグレル-アスピリンHazard ratio 0.68(95%Cl, 0.57 to 0.81)p<0.001アスピリンSurvival free of stroke図4 抗血小板薬併用群(クロピドグレルとアスピリンを21日まで併用後にクロピドグレル単剤に変更)では単剤群(アスピリン)に比較して脳卒中の発症が有意に抑制された〔参考文献10)より引用〕