カレントテラピー 35-12 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.12 71113脳卒中診療の最近の動向― 新しいエビデンスとトピックス―企画東京都済生会中央病院院長高木 誠わが国では脳卒中は死亡率,発症率ともに低下傾向にあるが,高齢化の急速な進行により,脳卒中,特に脳梗塞の患者数は今後もますます増加することが予想されている.脳卒中は一度発症すると重篤な後遺症を残すことが多いので,脳卒中医療では発症後の早期治療により後遺症をできるだけ少なくすること,一次予防,二次予防を徹底して発症そのものを少なくすることが重要である.わが国における脳卒中治療の最新のスタンダードは日本脳卒中学会の脳卒中ガイドライン委員会編集による『脳卒中治療ガイドライン2015』である.発刊からすでに2年が経過したので,追補版として2017年9月に[追補2017]が発行され,25項目が差し替えられた.[追補2017]は日本脳卒中学会のホームページに掲載されているので,ご参照いただきたい.近年の脳卒中治療における最もホットな話題は,血管内治療による血栓回収療法である.2015年になって内頸動脈または中大脳動脈などの脳主幹動脈閉塞例に対して,従来のt -PA静注療法に加えて血管内治療による血栓回収を行うことで急性期の転帰が有意に改善するという研究結果が次々と発表され,国際的に大きな注目を集めた.『脳卒中治療ガイドライン2015』ではその成果を十分に盛り込むことはできなかったが,[追補2017]ではステントリトリーバーよる血管内治療(機械的血栓回収療法)がグレードAの推奨となった.脳梗塞の再発予防におけるトピックスは,TIAと非心原性脳梗塞に対する急性期(発症からおよそ3カ月以内)に限った抗血小板薬の併用療法(dual antiplatelet therapy:DAPT)の有効性である.ハイリスクのTIAや非心原性脳梗塞では,特に発症から数日以内に再発のリスクが高いので,DAPTは発症後できるだけ早期に開始することが重要であることも明らかとなった.一方,慢性期に漫然とDAPTを継続すると,逆に頭蓋内出血のリスクを増加させるので注意が必要である.本特集では脳卒中診療の最近の動向として,この分野の専門家に新しいエビデンスやトピックスを中心にまとめていただいた.また,座談会では慢性期の脳卒中患者を診ることが多い実地医家向けに,再発予防を中心とした外来診療の実際についてのポイントをまとめた.本特集が脳卒中患者の診療にあたる先生方の日々の診療に少しでもお役に立てれば幸いである.エディトリアル