カレントテラピー 35-11 サンプル page 17/28
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カレントテラピー 35-11 サンプル
Current Therapy 2017 Vol.35 No.11 691079Ⅰ はじめに糖尿病患者の治療目標は,血糖コントロールを行うことで合併症の発症および進展を予防して健康寿命を維持することである.何を指標に血糖コントロールを行うかは重要なポイントであり,これまでHbA1cを指標に血糖コントロールを行うことによって細小血管合併症は抑制されることが知られているが1),2),大血管障害の明確な抑制効果は長らく認められていなかった3)~5).一方で,2008年,すでに承認済みであったrosiglitazone(チアゾリジン誘導体,日本では未承認)に心不全や心血管疾患(cardiovasculardisease: CVD)リスクが上昇することが報告されたのを契機に,2008年より2型糖尿病治療薬の新規承認申請には,事前に心血管疾患に関する安全性を米国食品医薬品局(FDA)のガイダンスに従い評価することが義務づけられた.近年,インクレチン関連薬,SGLT2阻害薬が次々と上市されているが,こうした背景があり新規治療薬vs. プラセボの大規模臨床研究の結果が次々に発表されている(図1).研究期間を短期間に抑え,検出感度を上げるためのイベント数が得やすい心血管ハイリスク群を対象とした研究デザインが多く見られるが,なかには,期待以上の心血管イベント抑制効果を示すものもあり,大変注目されている.本稿では,主にインクレチン関連薬とSGLT2阻害薬に関する臨床試験結果を紹介し,その意義と今後の展開について考えてみたい.Ⅱ DPP-4阻害薬現在,日本で最も使用されている経口血糖降下薬である.血糖依存性に作用を発揮するため低血糖を起こ話題の新薬:インクレチン関連薬とSGLT2阻害薬─大規模臨床研究から見えてきたこと─的場ゆか*1・園田紀之*2・小川佳宏*3*1 国立病院機構九州医療センター代謝内分泌内科医長*2 九州大学大学院医学研究院病態制御内科学分野講師*3 九州大学大学院医学研究院病態制御内科学分野教授/東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子細胞代謝学分野教授多彩な糖尿病治療薬をどのように使い分ける?糖尿病患者において,HbA 1 c を指標とした血糖コントロールの改善により大血管障害を抑制するというエビデンスは,これまで長らく認められていなかった.近年,新規糖尿病治療薬が次々と上市されており,これらの心血管疾患に対する安全性の検証のために,新規治療薬vs. プラセボの大規模臨床研究が施行されている.従来治療との比較で,心血管ハイリスクの2 型糖尿病患者を対象に行われており,DPP- 4阻害薬のサキサグリプチン,アログリプチン,シタグリプチンはいずれも非劣性を示し,GLP-1受容体作動薬のうちリキセナチドは非劣性を示したが,リラグルチド,semaglutide では優越性,SGLT 2 阻害薬のエンパグリフロジン,カナグリフロジンでも優越性を示す結果が相次いだ.これまで改善が困難とされてきた,大血管障害の進展した2型糖尿病の治療選択肢が増えることが期待される結果であり,今後のさらなる研究結果が待たれる.a b s t r a c t